文・写真=オヤジ編集者
1972年生まれ。明治大学文学部卒業。東北大学出版会事務局長。大学出版部協会理事。宮城教育大学非常勤講師。時事通信等に文芸・ノンフィクション作品の書評を執筆。河北新報にエッセー「とうほく本の散歩道」を連載中。
小林直之さん(東北大学出版会事務局長)
①『日本政治思想史十七~十九世紀』/渡辺浩/東京大学出版会
江戸から明治までの日本のかたちを、政治思想史の視点から読むことが、こんなにも刺激的で心躍ることとは![2010]
②『神田神保町書肆街考 世界遺産的“本の街”の誕生から現在まで』/鹿島茂/筑摩書房
すべての「神保町人」の胸に抱かれるべき一冊です[2017]
③『ハックルベリー・フィンの冒けん』/マーク・トゥエイン(柴田元幸訳)/研究社
正真正銘の名作は、いつ読んでも素晴らしいです[2018]
④『赤い大公 ハプスブルク家と東欧の20世紀』/ティモシー・スナイダー(池田年穂訳)/慶應義塾大学出版会
原著が秀逸です。さらに、翻訳が実に魅力的。そして、編集が上手い。この三つが揃えば、たとえ少々取っ付きにくそうなテーマでも豊かな読書を味わえます[2014]
⑤『ドミトリーともきんす』/高野文子/中央公論新社
心地よいめまいのような本です。私はこの世界観にどっぷりとはまりました[2014]
⑥『とっぴんぱらりの風太郎』/万城目学/文藝春秋
万城目ワールドの金字塔。驚嘆感涙の一冊です[2013]
⑦『イーダ 美しい化石になった小さなサルの物語』/ヨルン・フールム他(遠藤ゆかり訳・河野礼子監修)/創元社
私は、この本を一生の愛読書にします[2015]
⑧『波』/ソナーリ・デラニヤガラ(佐藤澄子訳)/新潮クレスト・ブックス
自尊心と勇気に満ちた、読み継がれるべき本だと思います[2019]
⑨『インフォメーション 情報技術の人類史』/ジェイムズ・グリック(楡井浩一訳)/新潮社
「情報と人類」についてのさまざまな歴史や事象を盛り込み、比類なき情報量を蓄えた一冊[2013]
⑩『恐竜の世界史 負け犬が覇者となり、絶滅するまで』/スティーブ・ブルサッテ(黒川耕大訳・土屋健監修)/みすず書房
恐竜の栄枯盛衰に人類をあて、いまその最中にあるという「第六の大絶滅」の行方を考えてみるのもよいでしょう[2019]
1967年生まれ、東北学院大学卒。プレスアート取締役編集局長。『仙台ファッション&ピープルマガジン COLOR』『大人のためのプレミアムマガジン Kappo』『せんだいタウン情報 S-style』編集長を経て、現職。仙台短編文学賞事務局長。
川元茂さん(Kappoプロデューサー
①『ザ・ロード』/コーマック・マッカーシー(黒原敏行訳)/ハヤカワepi文庫
終わりゆく世界で交わされる、父と息子の会話が美しく切ない[2010]
②『東京自叙伝』/奥泉光/集英社
東京は生き物であり、巨大な怪物である。しかもノンポリで享楽的で場当たり的な[2014]
③『ゲームの王国』/小川哲/早川書房
史実とマジックリアリズムを行き来しながら進む予測不可能な物語[2017]
④『想像ラジオ』/いとうせいこう/河出書房新社
今も、そしてこれからも必要なのは、死者を想像し、共にあることなのだと思う[2013]
⑤『紙の動物園』/ケン・リュウ(古沢嘉通訳)/早川書房
東洋思想とSFはよく合う[2015]
⑥『屋根裏の仏さま』/ジェリー・オオツカ(岩本正恵・小竹由美子訳)/新潮クレスト・ブックス
帯に記された〈百年前、「写真花嫁」としてアメリカに渡った日本の娘たち〉というコピーに惹かれました[2016]
⑦『渡良瀬』/佐伯一麦/岩波書店
けっしてドラマチックな展開があるわけではない。だがそこに生活があれば小説は生まれるのだ[2014]
⑧『街場の文体論』/内田樹/ミシマ社
書き手の意志や構えについて言及した、街場シリーズの最新作かつ最強の一冊[2012]
⑨『個人はみな絶滅危惧種という存在』舟越桂/集英社
舟越桂の彫刻作品と創作メモによって構成された、不思議な本[2011]
⑩『震災編集者 東北の小さな出版社〈荒蝦夷〉の5年間』/土方正志/河出書房新社
日本が自然災害列島である限り、この記録は読まれ続けていくはずですし、我々は震災編集者として各地に申し送りをしていく義務を背負ったということになります[2016]
編集者・作家・エッセイスト。1962年、北海道生まれ。東北学院大学卒。著書に『ユージン・スミス 楽園への歩み』(産経児童出版文化賞)、『新編 日本のミイラ仏をたずねて』、『てつびん物語 阪神・淡路大震災ある被災者の記録』、『震災編集者 東北の小さな出版社〈荒蝦夷〉の5年間』。荒蝦夷は2012年出版梓会新聞社学芸文化賞。2017年から2年間、読売新聞読書委員。2019年春、仙台市に〈古本あらえみし〉をオープン。
土方正志さん(荒蝦夷代表)
①『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』/内田洋子/方丈社
彼の地の「本のある風景」がじんわり温かく、初めて見るのになぜかなつかしくて、本好きならきっと行きたくなります[2018]
②『主の変容病棟・挑発』/スタニスワフ・レム(関口時正訳)/国書刊行会
『ソラリス』がなんといっても代表作ですが、本書も待たレムを語るのに欠かせない一冊となりそうです[2017]
③『掃除婦のための手引き書』/ルシア・ベルリン(岸本佐知子訳)/講談社
ノワールなにユーモラス、優雅なのに残酷。そして、書き続ける意志[2019]
④『マルセル・シュオップ全集』/マルセル・シュオップ(大濱甫他訳)/国書刊行会
豪華絢爛まばゆいばかりの小品が詰め込まれた宝石箱[2015]
⑤『氷』/アンナ・カヴァン(山田和子訳)/ちくま文庫
独自の世界を築き上げた女性作家カヴァン(1901~1968)のリバイバル、いよいよ最高傑作にして遺作の復刊です[2015]
⑥『フランス組曲』/イレーヌ・ネミロフスキー(野崎歓・平岡敦訳)/白水社
彼女が信じ、そして夢見ていた、時代への、歴史への希望に胸を打たれます[2013]
⑦『HHhH プラハ、1944年』/ローラン・ビネ(高橋啓訳)/東京創元社
歴史をどう捉えるべきか、そのひとつの解答が本書です。ラストがスゴすぎ[2013]
⑧『パタゴニアの野兎 クロード・ランズマン回想録(上下巻)』/クロード・ランズマン(中原毅志訳)/人文書院
どんな状況にあっても前向きで積極的で挑戦的な、ひとりの男の「冒険小説」なのかもしれません[2016]
⑨『ドナウ ある川の伝記』/クラウディオ・マグリス(池内紀訳)/NTT出版
およそ3000キロ、おそらくは暇を盗んでの数年がかりの9か国を横断する思索の旅。いいです。行きたいです[2012]
⑩『書物の宮殿』/ロジェ・グルニエ(宮下志朗訳)/岩波書店
新聞記者・編集者・作家としていきたグルニエが、思い出の作家たちと作品をユーモラスにノスタルジックに、鋭敏に辛辣に論じます。本好きにはたまりません[2017]
祝!オヤジ編集者10周年トーク<ベスト・オブ・ベスト 2010~2019>
10年間のベストテンから選び抜いた<ベスト・オブ・ベスト>をご紹介します。
出演/小林直之、川元茂、土方正志
日時/2020年1月3日(金) 13:00~15:00
会場/金港堂本店2F特設会場(仙台市青葉区一番町2-3-16)
入場無料 問い合わせ/022‐225‐6521(金港堂本店)
お待ちしています!