捨てられない雑誌ってありますよね。
そんな昔の雑誌にスポットを当てるべく
大好きな「サンデーソングブック」への
リスペクトも込めての「棚からひとつかみ」
雑誌バージョン連載・第二回です。
90年代~00年代の雑誌を見返しながら
同世代の方に「懐かしい」を
感じていただけたらと思います。
書棚から抜き出したのは、10代後半から20代半ばにかけてずっと買い続けていたTV雑誌です。このジャンルの雑誌といえばレモンを持った有名人が表紙を飾る『ザ・テレビジョン』が真っ先に思い浮かびますが、今回紹介したい東京ニュース通信社発行の『TV Bros.』は、買うならコレ!と決めて完全に指名買いをしていた大好きな雑誌でした。
なぜ『TV Bros.』じゃなきゃだめなのか?
それは、TV欄以外のページに心をがっちりと掴まれていたからです。
表紙に「祝!創刊300号」と謳われた1999年4月17日号を開いてみると、番組欄に使われているページは28ページ。番組紹介の記事ページなどもあるものの、全120ページのうちおよそ半分が特集やコラムで占められています。
これこそが『TV Bros.』を買い続けていた理由でした。番組表はもはやおまけのような感覚で、それ以外のページを読みたいがために毎号欠かさず手にとっていたのです。
ちなみに、300号の特集は「プロ野球を10倍楽しく聞く方法」。
プロ野球開幕のタイミングに合わせたタイムリーな特集かと思いきや、期待の選手や順位予想などには一切触れず、往年のプロ野球選手がリリースしたレコードやCDを軽くディスりながらも熱くレビューするという振り切った内容になっています。この“斜め上感”こそが『TV Bros.』の真骨頂でした。
独自の視点はコラム執筆者のセレクトにも表れていて、1999年4月時点での執筆陣は、浅草キッド、パフィー、おおひなたごう、清水ミチコ、岡田斗司夫、川勝正幸、町山智浩、忌野清志郎、石野卓球、ミルクマン斉藤、倉本美津留、爆笑問題 etc.。こんなメンバーのコラムをまとめて読めるのはこの雑誌をおいて他にありません。
考えてみれば、各TV雑誌に掲載される番組欄はどれも一緒。雑誌のカラー作るのはそれ以外のページということになります。当時、同ジャンルの雑誌の中で最もカルチャー寄りだった『TV Bros.』の突き抜けた個性は、今見返しても十二分に魅力的です。
新しい号が出ると、必ず最初に目を通していたページがありました。ミュージックコーナーの新譜レビューです。4人のレビュアーのうちのひとり、井上由紀子さんがレコメンドしたものを試聴するために、大型CDショップへ通うというルーティーンができていたほど影響されました。
彼女のレビューがなければ知ることがなかったであろうアーティストは数しれず。渋谷系ど真ん中世代の私としては、80年代後半に井上さんがロリポップ・ソニック、フリッパーズ・ギターのキーボーディストだったことも全幅の信頼を寄せていた理由のひとつだったかも知れません。
You Tubeやサブスクがなかった時代に、『TV Bros.』は新しい音楽と出会うきっかけを与えてくれる存在だったのです。
創刊から32年、現在は不定期発行となっている『TV Bros.』。調べてみると、過去の連載陣によるコラムや関係者が選ぶ特集や企画の傑作選などをまとめた胸アツな「TV Bros.2020年6月号 TV Bros.総集編特大号」が4月に発売されていたとのこと。
これ、かなり気になります。
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