Kappo 仙台闊歩

CULTURE 2020.06.03

【web連載】雑誌好きの棚からひとつかみ 第一回「STUDIO VOICEが好きだった」

今は出版社に勤務しておりますが
学生時代から雑誌愛は深かったと自負しています。
当時の雑誌が捨てられずに自宅の書棚に眠ったままなので
ここはひとつ、大好きな「サンデーソングブック」への
リスペクトも込めての「棚からひとつかみ」の
雑誌バージョンをやってみようかなと思います。
90年代~00年代の雑誌を見返しながら
同世代の方に「懐かしい」を感じていただけたらと思います。

『STUDIO VOICE』が好きだった

高校、大学時代を過ごした1990年代。とにかく好きだった雑誌のひとつが『STUDIO VOICE』でした。当時の私は、音楽もアートも人も、この雑誌に取り上げられているものはとにかくかっこいいと信じて疑いませんでした。超絶ちっちゃい文字やどう考えても視認性よりデザイン重視の色使いなど、この雑誌ならではのビジュアルも大きな魅力で、今思えば、エディトリアルデザインに興味を持ったのもこの雑誌がきっかけだったかもしれません。

熱量を感じる特集

今回棚から引っ張り出したのは、碇シンジが表紙の19973月号(Vol.225)。1997(平成9)年といえば、電気グルーヴが『Shangri-La』を、CORNERIUSが『FANTASMA』をリリース、サッカー日本代表が初めてW杯本大会出場を決め、『もののけ姫』や『失楽園』が大ヒットを記録。消費税が5%になったのもこの年でした。この号の特集タイトルは「エヴァンゲリオン終わりと始まり」。永瀬 唯、東 弘紀、斎藤 環、村上 隆らが原稿を寄せ、さまざまな視点からこの作品を分析している読み応えのある内容です。『新世紀エヴァンゲリオン』はすでに一大ブームとなっていたものの、当時は、現在ほどアニメ好きが市民権を得ていたわけではない時代だったように思います。そんな中で、単なる作品解説にとどまらず、約40ページにもわたってアニメを最新のカルチャーとして深堀りしまくっているところに、この雑誌ならではの熱と凄みみたいなものを感じた記憶があります。パラパラと読み返してみると、精神科医の斎藤 環による「庵野秀明は太宰治や筒井康隆の系譜に連なる」という分析は今読んでもなかなか興味深い内容だし、70年代の『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』、80年代の『AKIRA』『風の谷のナウシカ』に続く90年代のエポックメイキングな作品として『新世紀エヴァンゲリオン』を位置づけているのにも納得できます。当時自分が所属していたゼミの先生の「日本のアニメ史に残る名作は10年ごとに現れる。今がその時だ」という熱すぎる言葉を思い出したりもしました。なにより『STUDIO VOICE』がアニメ作品を特集することで、アニメを深く語ることがちょっとおしゃれでアカデミックなことに変わったような気もします。ちなみに、同じ年に発行された『日経エンタテインメント!』の創刊号でもエヴァ特集が掲載されていて、こちらには劇場版公開直前レポートとして林原めぐみのインタビューなどがまとめられています。並べてみると、カルチャー誌とエンタメ情報誌の切り口の違いも興味深いですね。

『STUDIO VOICE』の今

調べてみると、1976(昭和51)年に創刊した『STUDIO VOICE』は、2009(平成21)年に休刊するものの2015(平成27)年に復刊。今を切り取るカルチャー誌として発行を続け、HPSNSでも情報を発信しているようでした。私と同じくかつてのファンでしばらく離れていた人は、チェックしてみるのもよいかもしれませんよ。

STUDIO VOICE ONLINE

Twitter[STUDIO VOICE公式]

写真・文_庄子正挙(編集部)

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