TEXT&PHOTO=編集部(小林 薫)
みょうがたけ、あまり知られていない食材のようで、塩釜や大崎出身の人に説明しても、いまいちぴんとこないようです。名取や岩沼など、県南地域が特産だからでしょうか。
かくいう私がみょうがたけを初めて食べたのは大学生。当時岩沼に住んでいた友人の家で、彼女のお父さんも交えて晩酌をしていたときです。酔っ払ったお父さんが「俺は母さんが焼くみょうがたけの入りの玉子焼きが大好きなんだ」と言い始め、それを聞いたお母さんがうれしそうに作ってくれた玉子焼きで、初めて“みょうがたけ”を知りました。シャキっとした歯ごたえと、ほんのり香る風味がとても新鮮で、あっという間にお皿を空にしたのを覚えています。
残念ながら、震災で友人宅は津波の被害にあい、あの家でご飯を食べることはできなくなってしまいましたが、みょうがたけを見ると必ずあの日のできごとを思い出します。
そんなわけで食べたことはあるのですが、買うのは初めてで、ましてや自分で調理するのも初めて。とりあえず、『桃李』の鈴木さんが言う通り、甘酢(今回ははちみつとリンゴ酢)にひと晩漬けました。
帆立は、近所のスーパーで刺身用を調達。「葱姜片」に近づけるため、家にあったネギ油で生姜を炒めることにします。
まずはじめに刺身用の帆立をそぎ切りにし、スープで湯通しします。
中華スープの素を入れた熱湯にサッとくぐらせ、表面が白くなった“霜降り”状態に。
(中まで火が通ったらどうしよう、やだ、コワイ!)と思ったので、沸いてから一旦火を止め、
帆立を入れてからまた火を点けました。
ちなみに刺身用の帆立はそのままでもおいしいので、1切れつまみ食いしました。
ネギ油で生姜を炒め、みょうがたけを甘酢ごと投入。鈴木さん曰く塩ダレには薄口醤油を使っているそうなのですが、普通の醤油で代用しました。
子どもの頃から母に「水溶き片栗粉は料理をスタートする時点で水に溶いておくこと」と言い聞かされて育ったので、今回もそのように準備しておきました。とろみ付けし、帆立を入れて紹興酒を少量鍋肌から注いで完成!
スピード勝負の中華料理は、やはり段取りが9割ですね。
火を入れ始めてからあっという間だったので、みょうがたけのシャキシャキした歯ごたえはそのまま。帆立は甘みが増し、甘酢との相性も抜群です。
本当に簡単にできあがるので、もう一品おかずがほしいとき、おつまみがほしいときにもおすすめです。爽やかな初夏の味わいを楽しんでくださいね。
ハンドブレンダーの購入を検討し始めました。次回はトマトソースを作りたいです。
■ Kappo 2020年7月号 vol.106 ■
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