Kappo 仙台闊歩

CULTURE 2020.07.13

【web連載】雑誌好きの棚からひとつかみ 第三回「b*pみたいなキャンプがしたかった」

捨てられない雑誌ってありますよね。
そんな昔の雑誌にスポットを当てるべく
大好きな「サンデーソングブック」への
リスペクトも込めての「棚からひとつかみ」
雑誌バージョン連載・第三回です。
90年代~00年代の雑誌を見返しながら
同世代の方に「懐かしい」を
感じていただけたらと思います。

おしゃれキャンプは『b*p』で知った

キャンプを楽しむようになって15年以上が経ちます。初心者向けのセットを衝動買いしてすぐに南蔵王の野営場へ行き、寒さで一睡もできずに朝を迎えたのは初キャンプのいい思い出。以来、少しずつ道具と知識と経験を増やしながら今に至っています。

好きなアウトドア雑誌はいくつかありますが、今回紹介するのは、小学館発行の『b*p』です。

正確にはライフスタイル誌という位置付けの雑誌ですが、個人的にはキャンプスタイルをおしゃれに見せる雑誌の走りだったのでは、と思っています。

『b*p』ってどんな雑誌?

『b*p』は、1981年に創刊したアウトドア雑誌の老舗『BE-PAL』特別編集のムック本として不定期に発行される、「自然」「旅」「音楽」をテーマにしたライフスタイル誌です。

『b*p』の創刊は2004年夏。2020年の現在までにちょうど10冊が発行されていて、今回棚から引っ張り出したのは、2007年5月発行の『b*p』第4号。高尾山にあるツリーハウスの屋根の上に多部未華子さんがちょこんと座っている気持のいい写真が表紙を飾っています。

この号の第1特集のテーマは「仕事」。哲学者の木田元さんや元炭鉱労働者の「働くこととは?」をテーマにしたインタビューと一緒にフェス会場でのスナップがどどんと掲載されており、スナップは一見テーマとのようにも思われますが、実は全員が自分の仕事について簡単にコメントしていて、医者、大使館勤務、主婦、ベビーシッター、鍼灸師といった職業のイメージと、色とりどりの個性的なフェスファッションとのギャップが楽しいページになっています。

さらに、スナップに登場した何人かは、実際の職場での「仕事」取材もされており、「編集というのはこういうことだよな」などと妙に納得した覚えがあります。

ちなみに、他の号の特集は「村上春樹」「部屋」「自然派ゴハン」などライフスタイル誌らしく幅広いテーマが並んでいます。表紙に入っている「毎日が旅だったらいいよね。」というコピー(第9号からはもう少し長くなった)のとおり、どんなテーマであってもその裏側に“旅”を感じさせるような切り口で編集されているところが、この雑誌ならではの魅力だと感じています。

おしゃれキャンプ雑誌の始まりはこれかも

「自然」「旅」「音楽」を一度に楽しめるといえばキャンプインフェス。そもそも『b*p』を作るきっかけが2002年のフジロックフェスティバルだったということもあり、夏フェスとキャンプの情報は『b*p』の定番企画のひとつになっています。

(『b*p』創刊については公式サイトに詳しいのでそちらをどうそ)

毎号何かしらの形で登場するフェスとキャンプのページに共通しているのは、その場の空気感が伝わるような肩の力の抜けた写真が印象的なこと。当時キャンプ初心者だった私は、このカジュアルな雰囲気の誌面から“好きな道具だけ持って好きなように過ごせばそれでOK”というメッセージを勝手に受け取り、ますますキャンプにハマるようになりました。また、載っている写真を何度も見て、このタープの張り方がかっこいい、テントの中にはこんなラグを敷きたい、調理はカセットコンロで十分なのか、小さくて軽い焚き火台がいいな…などと、『b*p』みたいなキャンプがしたいと思ったものでした。

今でこそ書店の棚にはかわいくておしゃれなキャンプ雑誌、アウトドア雑誌がたくさんありますが、2000年代前半に創刊した『b*p』はその先駆けでした。音楽誌でもファッション誌でもアウトドア雑誌でもないライフスタイル誌として誕生した『b*p』が実践した“キャンプをスタイルで見せる”というフォーマットは、当時のフェスブームとの相乗効果もあって広く受け入れられたのだろうと思います。そして、そのフォーマットにオリジナリティを加え、進化させた“『b*p』後”の雑誌も多数存在します。

不定期発行の『b*p』は、公式サイトによると現在第11号を準備中とのこと。普段からキャンプ雑誌やアウトドア雑誌をよく見る人なら、『b*p』のライフスタイル誌的視点でのキャンプ記事もきっと楽しめると思います。見つけたらぜひ手にとって読んでみてください。おすすめですよ。

TAG
BACK TO LIST
【8月31日まで】 31の事業者が結集! 秋保の魅力を伝えるクラウドファンディングスタート前の記事へ
【最新情報あり】⑦暑い日に食べたい!宮城・仙台そばの名店 – 蕎花次の記事へ