仙台空港から海外への定期路線が就航して2020年で30年。観光に、ビジネス、国際線の旅客累計は約872万人に及ぶ。人やモノが動く背景には何があり、どんなビジョンが描かれているのか。世界各地へ飛び立つ旅人を送り出し、降り立つ旅人を迎えてきた、さまざまな現場の声を聞けば、これからの仙台空港の姿が浮かび上がる。
仙台―ソウル線の就航と同時期に大手旅行会社に就職し、この30年間、仙台空港と業界の変遷を見てきました。地元に国際空港があるメリットは、成田空港を往復する時間と労をかけず、気軽に出かけられること。帰国後も感動が冷めないうちに自宅まで一直線。成田や中部など他空港の乗り継ぎも視野に入れると行き先は無限に広がります。
仙台空港発着の国際線は新規就航と運休をたびたび繰り返してきました。常に新しい路線の人気は高く、香港がイギリスから返還される直前の駆け込み需要も目立ちました。しかし、路線を継続させるのは容易ではありません。ソウルや台北のようにある程度の搭乗率でベースを確保し、時々の流行を上乗せしていけるのが理想的。定期便が再開したばかりのバンコクは注目度が高く、コロナ運休の直前はちょうど人気が急上昇して安定路線となるのも間近でした。
仙台空港は名実ともに東北6県のゲートウェイであってほしいです。他の5県のお客様を仙台発着の中距離路線に呼び込みたい。逆に、海外から仙台に降り立つ方が広域を周遊し、他県の空港から出国するという選択肢がもっとあるといい。仙台空港の魅力もより高まるでしょう。
業界の悲願はもちろん現状路線を回復すること。ウィズコロナで人間関係やビジネスのつながりがリセットされた反面、これまでにないチャンスが生まれる可能性も大です。ピンチの中からチャンスを模索していかなければと考えています。
仙台空港の旅客数はここ数年、対前年度比増加を更新してきましたが、2020年は新型コロナウイルスという逆風で激減しました。ただ、長期的に見れば旅客増加は世界の趨勢です。民営化30年後の年間旅客数550万人という目標は今後も目指していきます。移動は人類の本性でもあります。人は移動し、人と会うことで自らが発展してきたのですから。まずは出入国制限の緩和に応じて定期便をコロナ以前の状態に戻すことが目標です。
国内初の民営化空港を運営する東急グループは鉄道業を祖業とします。根幹を支えるのは安全第一の精神。旅客のコロナ感染を防ぐため、手洗いやソーシャルディスタンスを呼びかけながら、検疫・PCR検査に対応する人員や動線の確保に向けた検討を空港関係者と一体となって進め、楽しい旅を支えます。
現地に足を運ぶことはオンラインでは得られない感動と喜びを与えてくれます。コロナ禍が収束に向かうとき、遠くへ行きたい、知らない土地を見たいという欲求が頭をもたげるはず。特に、若いうちに異なる文化に触れ、見聞を広げることは人生を豊かにします。仙台から世界へ飛び立つモチベーションの醸成を図ると同時に、一人ひとりが日本に、東北に来てよかったと感じてくださるようイマジネーションを働かせ、地域の魅力を発信していきます。
空港はエアラインと旅客あってのもの、そして旅の始まりと終わりを印象づける場所です。より快適で便利にご利用いただける、皆様に愛される空港を目指したいと考えています。
連載でお届けしたインタビューも、本日で最終回。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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【関連リンク】
【連載①】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
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【連載②】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
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【連載③】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
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