Kappo 仙台闊歩

CULTURE 2020.12.16

【連載②】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」

仙台空港から海外への定期路線が就航して2020年で30年。観光に、ビジネス、国際線の旅客累計は約872万人に及ぶ。人やモノが動く背景には何があり、どんなビジョンが描かれているのか。世界各地へ飛び立つ旅人を送り出し、降り立つ旅人を迎えてきた、さまざまな現場の声を聞けば、これからの仙台空港の姿が浮かび上がる。

「運ぶ」に付加価値を創出し、航空貨物を誘致/伊良波長治さん(仙台国際空港株式会社 航空営業部貨物営業グループ・チーム長)

貨物の輸送手段は海外との往来なら貨物船、国内は陸上のトラックが主流です。スピードが必要な場合は空の便の出番。私たちの扱う荷物は主に、国内線は宅配便、国際線だと航空機や自動車の部品、水産加工品です。アシアナ航空が定期で貨物専用機を運航した時期もありますが、現在は旅客機の床下スペースを活用して運んでいます。

2016年の空港民営化後、仙台空港をハブとした航空機部品の取り扱いが増えました。アメリカから積んで仙台空港で通関し、北関東の工場で加工して再び仙台から積載する、という具合です。空港は貨物取扱いを年間2万5000トンに増大することを目標に掲げていますが、それには機材の大型化、欧米や東南アジアなど新規路線の拡充、貨物専用機の誘致が不可欠です。

そのために重要なのが、新たな荷物の呼び込みや海上・陸上貨物との連携などの地道な努力です。本来は荷主が行う部品の検品作業を空港側が担当するなど、荷主のニーズや課題を解決するための付加価値を提案し他空港と差別化を図るのがポイント。荷主がメリットを感じれば、仙台空港を選んでくれるはずです。

東北の食材を東南アジアや中東に輸出する事業、つまり「運ぶ物を売る」ことにも着手しました。冷凍のホタテやカキ、日本酒、食肉を中心に、知名度が上がれば仙台空港を利用した輸出が増え、東北の企業の活性化を支えられると確信しています。

「何事も起きない」のが仕事。空港設備を一手に担って/我妻和彦さん(仙台国際空港株式会社空港運用部施設・設備グループマネージャー)

空港内のあらゆる施設・設備の保守管理を担当して32年になります。所属するグループとして、民営化後は、旅客ターミナルビル内に加え、灯火、滑走路、消防車両の管理等も業務のうちです。

2011年3月11日は旅客ターミナルビル3階で、南から向かってくる津波を見ました。瓦礫は1階を直撃し、利用者、地域住民、職員など約1600人が孤立。4日後から復旧工事に取り掛かり、米軍の支援もあって瓦礫で埋まった滑走路が復旧されました。

最大の問題は灯火もないなか、いかにして航空機を飛ばすか。1階にベニヤ板とブルーシートで急ごしらえの設備を整え、4月13日に国内線6便が離陸。9月25日には国際定期便の運航も再開し、10月26日、完全復旧できました。何千人もの方々の昼夜を問わないサポートのおかげです。今でも空港に避難したという方から、「あのときはありがとう」と声を掛けられることがあります。

基本的に、航空機がスムーズに離着陸し、お客様が施設を快適に利用できるよう安全・安心を徹底するのが仕事です。それはインバウンド増加や空港民営化を経ても変わりません。これまで事故もなくこられたのが誇りです。何事もないことが仕事といったらいいか……。

現在は、定期的に津波避難訓練を行い、災害時に2000人が3日間過ごせるだけの備蓄を心がけています。課題は保安検査場の混雑緩和。増便や旅客の増加を見越し、機械類の精度を上げて数を増やすなど、処理能力の向上を検討しています。

次回は連載最終回。これからの仙台空港について語っていただきました。どうぞ、お楽しみに。

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【関連リンク】

【連載①】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
https://kappo.machico.mu/articles/4472

【連載②】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
https://kappo.machico.mu/articles/4494

【連載③】キーマン7人に聞いた「仙台空港国際化30周年 これまでとこれから」
https://kappo.machico.mu/articles/4499

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