「30年間、この伝説のスピーカーシステムを探し続けてきました。良質なコンディションのものが少ないので、手を出すなと言われていましたが、今回ご縁があって水沢のジャズ喫茶のオーナーからParagon(パラゴン)を譲り受けることになりました。奇跡的な出合いです。1958年頃の製造で、約60年前の音はまるで熟成したブルゴーニュワインのようです」
オーナーの菊池洋さんは、中学2年生でジャズに魅せられ、FENから流れるカウント・ベイシーに夢中になった。大学に入って一関のジャズ喫茶『ベイシー』に通い、オーディオにはまる。ジャズ歴は50年以上だ。
35歳の時、60歳でジャズ喫茶を開業するというライフプランを立てた。だが57歳で東日本大震災に遭う。しばらくはワインインポーター業に注力するが、67歳になった頃、コンディションの良いParagonと邂逅し、開業を決意。2022年12月、68歳で夢を実現させた。店名の『Paragonian』は、「最高を求める人」という意味を持つ造語だ。
菊池さんは「防音設計にこだわり、会話が困難なレベルで大音量を流す本格的なジャズ喫茶です。ゆったりと音楽を楽しめる環境を整えました。ライブも開催するので、地元のジャズミュージシャン達の活躍の場にもなってほしいと思っています。そして私が収集しているデビット・ストーン・マーチンのカバーアートも楽しんでいただければ」と語る。
営業は木曜から日曜のみ。11時から15時の間はリスニングカフェに。連坊のSPARK COFFEE ROASTERと開発したオリジナルコーヒーとともにジャズの名盤を楽しむ。夜は35年間のインポーターの経験を踏まえ、はずれのないワインを最高のグラスで提供するワインバーに。
「ジャズとワインはよく似ています。試してみると好き嫌いがわかるんです。とっつきにくいと思わず、自分の好みを知るために、まずは飲んでみる、聞いてみる。しばらくすると、世界が開けてきます」
※不定休もあるので来店する場合は、事前に電話またはインスタグラムで確認を。