TEXT&PHOTO:三浦奈々依
いつか参拝に訪れて欲しいという願いを込めて、苦難を乗り越え甦った八戸の宝「蕪嶋神社」を前編に続きご紹介します。
蕪嶋神社が全焼したのは2015年11月5日の未明。歴史ある神社は炎の海に包まれ、一夜にして灰と化しました。その後、多くの方々のご支援をいただき、ウミネコの繁殖期間の4月から8月上旬を除いて工事を進め、今年の3月26日、例大祭が執り行われ、再建を果たしました。
新型コロナウィルス感染防止のため、新社殿の入り口にアルコール消毒液や体温計を置き、入場を制限しながらの一般公開。それでも、「4年前の火災を思い出すと、夢のようです」とおっしゃった野澤俊雄宮司の晴れやかな笑顔が心に残ります。
ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている蕪島は、ウミネコの繁殖の様子を間近で見られる観光スポットとしても人気を集めています。
境内に足を踏み入れた瞬間、ウミネコたちの歓迎の鳴き声が響き渡り、子どもたちも大はしゃぎ。海風を浴びながら、社殿の周りを3周することで身が清められるという「運開きめぐり」は、蕪嶋神社独自の参拝法。真冬ともなれば、あまりの海風の強さと冷たさに体を震わせ、子どもたちも歯を食いしばりながら、社殿の周りを3周し、手を合わせます。
蕪嶋神社最大の魅力は、なんといっても自然が織りなす絶景。
毎年3月から8月頃まで子育てのために約4万羽のウミネコが飛来。社殿の裏手から眺める、荒々しい岩肌と、青い海を悠々と飛び交うウミネコの姿は壮観です。
ウミネコは漁師たちに豊かな漁場を知らせ、幸せや富を運んでくれる弁財天の御使。神域で出合うウミネコには品格さえ漂います。
ちなみに、蕪島神社では空から降ってくるフンならぬ、運が見事に命中すると、縁起が良いとされ、「会運証明書」を授与していただけます。運は欲しいけれど、フンは困るという皆さんは、入り口で傘を借りましょう。ただし、傘に運がついても「会運証明書」は発行されませんので、ご注意を。
蕪島のベストシーズンは、まさにこれから。5月中旬には島全体に菜の花が咲き乱れ、菜の花の黄色、空の青、ウミネコの白、大鳥居の赤という美しい彩のコントラストがお楽しみいただけます。
蕪島の「蕪」と「株」が同じ読みであることから、株価と人望の上昇、商売繁盛のご利益を求め、地元の方はもちろん、全国の方がお求めになる人気の御守が「かぶあがりひょうたん御守」。
ある女優さんが、蕪嶋神社を訪れ「株が上がりますように」という願いを込めて絵馬を奉納。
見事、NHK朝の連続テレビ小説のヒロインの座を射止めたというのは有名な話です。
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、このピンチをチャンスに変えようと、スポーツジムや学習塾等ではオンライン指導を、飲食店ではデリバリーやテイクアウトのサービスを開始。コロナに負けるものかと、必死に頑張っていますね。
それでもくじけそうになった時は、どんなに苦しくても前に向かって進むしかない、そう思って堪え抜き、再建の日を迎えた蕪嶋神社の甦りの御力を御守で授かりましょう。
新型コロナウィルス感染拡大が進む中での蕪嶋神社の一般公開。
「今の状況をどう思われますか?」と率直にお尋ねした私に、宮司様は、「神様は再び、大きな試練をお与えになりました」と。
東日本大震災の津波被害を免れ、復興のシンボルとして親しまれてきた歴史ある神社は一夜にして焼失。やっと、再建に漕ぎ着けたと思ったのも束の間、今度は新型コロナウィルスの影響により、予定されていた塩町えんぶりによる奉納等も中止。全員がマスクを着用し、ひっそりと例大祭が執り行われました。
あれから約一カ月。
「祈るしかありません」とおっしゃる宮司様の朝は、新型コロナウィルス感染拡大の早期終息を祈願する祝詞を奏上することから始まります。
きっと、日本中の神社で今、平和の祈りが捧げられているのでしょう。
私は神職ではありませんが、家の中で、離れて暮らす家族や友人、お世話になっている人を思い、静かに手を合わせる。その時間もまた、神様とつながるひとときだと思っています。
いつの日か、蕪嶋神社へ。
みんなで護った八戸の宝が、蕪島の頂に輝いています。
フリーアナウンサー。カラーセラピストとして全国で活動。伊達政宗公にまつわる番組取材を機に、歴史に目覚める。神社仏閣にも興味を持ち、これまで全国100ヵ所以上訪れている。2014年4月「お家で楽しむデイリーおみくじ 福を呼ぶ 四季みくじ」をプロデュース。毎週土曜12時~、Date FM「IN MY LIFE」パーソナリティ。