PHOTO&TEXT=小林薫(編集部)
『秋保醸造所』の毛利親房さんからの発案で開催に至った『暁月の宴』。東京で開催されたワイン×寿司のイベントに感銘を受け、宮城でもこの組み合わせを広めたい、と企画したものの、コロナ禍もあり、ようやくの開催となりました。
今回は記念すべき第一回目。お品書きにはお料理、日本酒、ワインそれぞれの名前のほかに、お酒の温度帯まで書いてあります。さらに、料理とそれに合わせる日本酒、ワインの名前が書かれたシートを1枚ずつ配られており、ワインと日本酒、どちらをあわせた方が好みか、◎、○、△と記入していく趣向です。参加した第一部はほぼ満席、皆さん期待に胸を膨らませながら、まずは乾杯!
乾杯には秋保醸造所の「AKIU CRAFT CIDER Brut」を、10℃でいただきました。リンゴは100%宮城県産で、亘理町のフジ、加美町のジョナゴールドと、宮城県の新品種・サワールージュを使っています。キリッと冷えたシードルはキレがよく、さっぱりとした印象です。先日結果発表になった「第4回 フジ・シードル・チャレンジ 2020」で、銅賞を獲得! 毛利さんは「まだまだ銀、金と上があるので頑張りたい」とお話なさっていました。
日本酒の一杯目は「一ノ蔵 純米吟醸 蔵の華」をひやで。一ノ蔵の佐藤克行さんは「序曲、ということで静かなタイプを選びました」。穏やかでまとまりのある一杯で、温度が低いので香りも控えめです。
お通しの「いぶりがっこチーズ」にそれぞれ合わせてみると、ワインはチーズと合うし、いぶりがっこは日本酒と合うし、どちらも甲乙付けがたい結果に。参加者の皆さんも悩みながらシートに記入していました。
さて、ここからはお刺身です。
ワインは「甲州シュールリー’19」が登場。
鯛、カンパチと合わせていた時に、ふと毛利さんから「甲州は日本料理、特にワサビと合うんですよ」とひと言。ワサビだけを口に含み、甲州をサッと飲んでみると…
「あ、これはすごい! ワサビが甘く感じますね」と参加者一同感動していました。
日本酒は、お品書きには「純米吟醸酒蔵の華+?」との記載。
どんなお酒が出てくるんだろう、と考えていたら、なんと先ほどの「一ノ蔵 純米吟醸 蔵の華」に「本醸造生酒 ひゃっこい」をブレンドするという意味でした。「ひゃっこい」の若々しい風味で「純米吟醸」の甘さとトーンが控えめになり、白身の旨みはもちろん、三品目の「帆立磯辺」の海苔と醤油のほんのりとした香りが活きてきます。
日本酒をブレンドする、という発想がなかったので、驚きの連続でした。
刺身の最後にはキャビア、イクラ、イカ、ウニがカクテルグラスに盛り付けられた「刺身カクテル」。親方・渡邉貴之さんから「よーく混ぜて、食べてくださいね」と供されましたが、美しすぎて混ぜるのがもったいない…。いや、おいしく食べるためには仕方ない。
しっかり混ぜて、お酒と合わせていただきました。ウニとイカの甘み、イクラとキャビアのぷちぷちとした食感と単体でも十分素晴らしいのですが、お酒との相乗効果で味わいは倍増。
口の中が幸せになりました。
刺身のあとは、熱々の箸休め「フォアグラの茶碗蒸し」。ダシの効いた茶碗蒸しの上に、フォアグラのムースがのった、濃厚な一品です。毛利さんが「合わせる料理が難しい」という「秋保フィールドブレンドブラン」と合わせます。ゲヴュルツトラミネールやピノ・グリなど、数種のブドウをブレンドした、力強い、華やかな一杯です。日本酒は人肌よりやや温かい、43℃の「生酛特別純米酒 耕不盡(こうふじん)」を合わせます。初めて聞いた「耕不盡」は、700本の限定生産で、今はもう手に入らないものでした。生酛造り用の桶から手づくりした、『一ノ蔵』渾身の一本。43℃だと、味わいが膨らみつつキレがよく、生酛造りのふくよかな酸と味わいで、フォアグラの味にも負けません。
ここで、親方・渡邊さんが「これは、いいものが入りました」と大興奮するくらいの大間産の“いいマグロ”が登場! さすが、マグロにこだわる『暁月』。赤み、脂の入り方も美しく、見ているだけでもうっとり。一切れ口に入れた親方も「ふふふ」と思わず笑みがこぼれるほどの味とか。これは期待が高まります!
そんなマグロからスタートする握りとのペアリングは、後編でお伝えします。
後編はこちらから