2022年1月、かつての老舗酒造『森民酒造』(現モリタミ)の4代目・森將さんが、新しい銘柄を発売した。『モリタミ』の前身は大正13年(1924)年、長町に創業した『森民酒造』。若林区荒町にある『森民酒造本家』から分家し「民光」を代表銘柄として酒造りを続けていた。しかし、宮城県沖地震で被災し、酒蔵免許を返納。現在は休業中だが、その後も酒販店として酒とともに歩みを進めてきた。
「海外では日本酒は“SAKE”としか書かれておらず、日本産ではないことも多かった。本物の味を知っている人は少ない。日本酒は“SAKE”ではなく“JAPANESE SAKE”であることを発信したい」と実家に戻り、2年の歳月を経て一から酒造りの準備を始めた。
酒造りの経験を持つ父・信之さんにも教えを請い、秋田の酒造の手を借り醸した「SAKE DRESS」。濃厚かつ爽快な味わいで、コクのある料理にも合う。中でも森さんが一番こだわったのは香りだ。「一番にインパクトがあるし、記憶に残るのが香りです。ラ・フランスのような、フルーティな香りになりました」と“至極の香滴”を冠する所以を話してくれた。
酒造りを経て「日本酒を造れるのは、日本人の繊細さ、誠実さ、勤勉さと、日本の気候があったからだと思っています。ゆくゆくは、日本酒の文化そのものを世界に発信していきたいです」。でもまずはファンづくりからですね、と笑う森さん。
「SAKE DRESS」という名前には「ドレスを身にまとった女性がスポットライトを浴びるかのように、その場や人々を魅了してほしい」との想いが込められている。かつて醸していた「民光」も、創業時に流行していた病や天災に対して、世の中を明るくしてほしいと付けられた名だという。新しい銘柄に希望と未来を託した彼の挑戦は、まだ始まったばかりだ。