TEXT=編集部

東北各地にある星野リゾートの宿をめぐりながら、その土地に息づく文化や風土、人の営みに触れる連載「土地を感じる、東北を感じる。
地域とつながる星野リゾート」。
第3回は、青森県・大鰐温泉郷にある『界 津軽』を紹介します。
「木漏れ日kogin」の廊下。
青森・大鰐温泉郷にある『界 津軽』。15年前に、地域の文化を体感できる温泉宿・界ブランドの先駆けとして開業し、“王道なのに新しい”というコンセプトを体現してきました。
数ある津軽文化の象徴として、館内の設えや客室など、宿のあちこちに取り入れられているのが津軽こぎん刺しです。
ふと目に入る幾何学の文様が、旅人に「津軽に来た」と感じさせてくれます。
館内の「木漏れ日kogin」の廊下は、アメリカのインテリア・デザイン誌『Architectural Digest』で「世界のホテルの美しい廊下特集10選」に選ばれた空間。時間によって表情を変える光と、こぎん刺しの文様が重なり、館内を歩く時間そのものが印象的なものになります。
スタッフから直接こぎん刺しの手ほどきが受けられる。
今年から、『界 津軽』では滞在中に楽しめる体験として「こぎんの手習い」が始まりました。これまでも館内のトラベルライブラリーで、24時間こぎん刺しのしおり制作を体験できるスペースがありましたが、初めて体験する宿泊客の声を受け、スタッフが直接手ほどきをする時間を設けたものです。
「こぎんの手習い」では、スタッフに教わりながら、くるみボタンやコースターなどを制作できます。針を持ち、ひと目ずつ文様を追っていくと、はじめは完成させることに夢中になります。けれど、手を動かすうちに、こぎん刺しが津軽の長い冬の暮らしから生まれた知恵であることが少しずつ実感できるはずです。
江戸時代、津軽の人々は麻布で仕立てた着物を身につけていました。
厳しく長い冬を少しでも快適に過ごすため、布目を塞ぐように木綿の糸で刺し子を施したことから、こぎん刺しの歴史は始まります。
暮らしの必要から始まった針仕事は、やがて身近なものを写した文様となり、津軽の美しい手仕事として受け継がれてきました。
津軽に暮らす人にとって、こぎん刺しは子どもの頃から家族や祖父母に教わる身近なもの。
代々伝わる文様がある家も多いといいます。
そんな話を聞きながら針を進める時間は、脈々と受け継がれてきた伝統と、地域の暮らしにふれるひとときでもあります。
ご当地部屋「津軽こぎんの間」
「刺し放題キット」。
注目したいのは、津軽出身ではないスタッフも、こぎん刺しを理解するために地域の年配者や作家のもとを訪ねて学んでいることです。
地域の文化を自ら学び、自らの言葉で伝える。その姿勢に、『界 津軽』が地域の文化と向き合ってきた時間が表れています。
客室にも、こぎん刺しの美しさが息づいています。
青森県出身のkoginデザイナー・山端家昌さんとともに、こぎん刺しの模様を現代風にデザインしたご当地部屋「津軽こぎんの間」。
伝統の文様を、今の滞在に合う空間として楽しめる部屋です。
思う存分こぎん刺しを楽しみたい人には、「刺し放題キット」も用意されています。宿でふれた手仕事を、自分のペースでもう少し深めてみる。
そんな過ごし方もできそうです。
プロの津軽三味線奏者・佐藤晶さん。
「かまくら露天風呂」。
本物のリンゴが浮かぶ内風呂。
『界 津軽』の楽しみは、こぎん刺しだけではありません。
青森ヒバで造られた内風呂には、リンゴが浮かびます。
使われているリンゴは、サイズや色などの理由で廃棄しなければならないものを農家から買い取り、利用しているそう。
津軽らしさを感じながら、青森ヒバの香りに包まれる湯あみを楽しめます。
水庭と季節で変わる木々を眺めながらくつろげる「かまくら露天風呂」も、印象的な場所です。大鰐温泉郷は800年以上の歴史を持つ温泉地。温泉街にある「湯魂石薬師堂」にまつわる伝説などは、館内の「温泉いろは」で学ぶことができます。
夜には、津軽三味線の音が宿に響きます。プロ奏者の佐藤晶さんとともに、指導を受けたスタッフも登場。手仕事と音楽、そのどちらにも、津軽の人々が受け継いできた歴史があります。
こぎん刺しの文様を追い、津軽三味線に耳を澄ませ、湯に浸かる。
『界 津軽』で過ごす時間は、津軽の文化を自分の感覚で受け止める旅でもあります。
旅を終えたあと、日々の暮らしの中にある手仕事や地域の何気ない文化に、ふと目を向けたくなる。
『界 津軽』でのひとときは、日常にそんな小さな変化をもたらしてくれることでしょう。
〈界とは〉
星野リゾートが全国に23施設を展開する温泉旅館ブランド。
「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、季節の移ろいや和の趣、伝統を生かしながら現代のニーズに合わせたおもてなしを追求しています。
また、その地域の伝統文化や工芸を体験する「ご当地楽」、地域の文化に触れる客室「ご当地部屋」が特徴です。
住所/青森県南津軽郡大鰐町大鰐字上牡丹森36-1
電話/050-3134-8092(界予約センター)
チェックイン/14:30
チェックアウト/11:00
料金/1泊3万1000円〜
※2名1室利用時1名あたり、夕朝食付
交通/JR大鰐温泉駅から車で5分(無料送迎あり・要予約)
URL/https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaitsugaru/