写真=ノブフォト(鈴木信敏) TEXT=鎌田ゆう子
Kappo5月号の巻頭特集「東北とアート」の中から、2023年7月に開館から30周年を迎える岩手県岩手町の『石神の丘美術館』をご紹介します。
今年7月に開館30周年を迎える岩手県岩手町の『石神の丘美術館』。
1973年から30回にわたって「岩手町国際石彫シンポジウム」が開催され、〝彫刻の町〞としての伝統があったことから、県内初の野外美術館として1993年7月に開館した。
2002年には隣接地に「道の駅石神の丘」が新設されたのを機に美術館の建て替えが行われ、2021年には石神山の斜面を利用した野外エリアが「花とアートの森」としてグランドリニューアルオープンしている。
「『石彫だけでなく、さまざまな彫刻作品を野外で楽しんでほしい』というコンセプトのもと、『花とアートの森』には現代彫刻家の24作品を展示しています」と説明するのは、学芸員の齋藤桃子さんだ。
約1・5㎞の散策路に設けられた「空の広場」「風の広場」「あそびの広場」などのエリアに、動物をモチーフにした作品で人気の三沢厚彦氏のブロンズ彫刻や、金属を素材とした軽量なスケルトン構造の作風で知られる西野康造氏の作品などがちりばめられており、作品そのものはもちろん、豊かな自然に溶け込むような展示の工夫も見どころだ。
また、新たな魅力として加わったのが、路傍に植えられた100種類以上の植物。
季節ごとに彩りを添える草花を愛でながら、自然散策と芸術鑑賞を心ゆくまで満喫することができる。
ラベンダーや紫陽花が見ごろを迎える6月下旬から7月上旬にかけての期間は特におすすめだ。
館内の企画ギャラリーでは、岩手ゆかりの作家の作品を中心とした展覧会も周期的に開催している。
「企画展に関連して『花とアートの森』にも作品を展示するなどしています。館の中と外の両方でアートとの出会いを楽しんでもらえたらうれしいです」と齋藤さん。
気候が良くなるこれからの季節、ぜひ足を運んでほしいスポットである。
書のよろこび 沢村澄子展
4月22日(土)~6月4日(日)
大阪府生まれの書家・沢村澄子は、岩手県盛岡市を拠点に精力的な活動を繰り広げている。
流派に属さず展開してきた活動は、令和4年度芸術選奨美術部門・文部科学大臣賞を受賞するなど高く評価されている。
展覧会では新作を含む沢村澄子の書を紹介。
5月21日(日)午後には、野外エリア〈花とアートの森〉での公開制作も行う。