写真=齋藤太一 TEXT=工藤葵
東北には、銘柄牛、ブランド豚はもちろん、地鶏や羊、馬肉など、その肉を目的に訪れたい名店と、食文化があります。各県の生産者や専門店、料理人が込めた肉料理への思いを汲み取りながら、うまい肉を求めて、東北を旅してみませんか? 今回は、Kappo9月号から青森県十和田市の『馬肉料理 吉兆 十和田店』をご紹介します。
青森県五所川原市に本社を構える『有限会社小田桐産業』は、国内でも指折りの大きな規模で食用馬を肥育している。
自社牧場があるのは、夏は涼しく、冬は地吹雪にさらされるほどの厳しい寒さに包まれる五所川原市金木町。
厩舎には布団代わりになる良質なもみ殻を敷きつめ、デリケートでストレスを抱えやすい馬のためにこれまで多くの時間を費やして礎となる肥育技術を確立してきた。
地元産の稲わらを飼料に育てた食用馬は、南津軽郡田舎館村にある直営工場「ATO食肉センター」で、と畜・解体・加工を経て出荷・販売。
この肥育生産から販売・提供までを自社で一貫するシステムにより、その品質と鮮度を保証した独自ブランド『あおもり馬選』のブラン
ディングに励んできた。
「一度食せば忘れられない馬肉」を謳い、これまで多くの消費者へ届けてきた妥協のないこだわりは、系列の食事処『馬肉料理 吉兆 十
和田店』のメニューにも表れている。
1993(平成5)年の開店以降、30年店舗を切り盛りしてきた店長・沢井広喜さんは、「鮮度がよいのは当たり前。
馬肉は注文を受けてからカットし、いつも最上の状態で提供してきました」と胸を張る。
馬肉文化が息づく南部地方で食べられてきた「義経鍋」や「桜鍋」はもちろんのこと、馬刺しやユッケを提供できるのは肉の品質に自信
があってこそ。
タレの一つをとっても妥協がない創意工夫に溢れた馬肉料理の数々は、滋味深い馬肉の旨みを最大限に引き出したものばかりだ。