Kappo 仙台闊歩

TRAVEL 2023.10.11

平安京の秋、2023年だけの特別な旅へ。世界遺産東寺 真言宗立教開宗 1200年記念特別拝観 「東寺のすべて」

取材・文=三浦奈々依

「世界遺産・東寺 お砂踏み」からはじまる東寺とのご縁

「世界遺産・東寺 お砂踏み」は、2014年4月2日~8日藤崎で開催された

平安遷都とともに建立された東寺。桓武天皇のあとに即位した嵯峨天皇が、唐で新しい仏教、密教を学んで帰国した弘法大師空海に東寺を託し、今年で1200年を迎えた。平安京が遷都されたとき、東寺と西寺しか許されなかった寺院の建立。西寺は時の流れに消え、現存する平安京の遺構は、唯一、東寺だけになった。

私が初めて東寺を訪れたのは、2011年秋。東日本大震災発生から半年、さまざまな思いが胸に渦巻いていた時期だ。弘法大師空海が宇宙を表現したともいわれる寺域。釈迦と如来、神と仏、異国と日本、あらゆるものが共存する仄暗いお堂で過去でも未来でもない、生きている今この時を感じることができたとき、はじめて心の波がしずまった。

あの日、東寺で作品展を開催する仏画家・観瀾斎先生とのご縁が生まれ、そこから更なるご縁が紡がれ、2014年春、仙台の藤崎百貨店にてKappoがプロデュースする「世界遺産・東寺 お砂踏み」が開催されることとなった。その折、仙台にお越しいただき、皆さんの話に真剣に耳を傾け、鎮魂と復興への祈りを捧げてくださった東寺の三浦文良さん(現執事長)とのご縁は今も続いている。東寺は今年、弘法大師空海生誕1250年、真言宗立教開宗1200年となる大きな節目の年を迎えた。

真言宗が開かれて1200年目の特別拝観

国宝「講堂立体曼荼羅・五菩薩坐像」 画像提供/株式会社便利堂

重要文化財「薬師三尊坐像」 画像提供/株式会社便利堂

国宝「両界曼荼羅図(伝真言院曼荼羅)胎蔵界」 画像提供/株式会社便利堂

2023年10月9日から31日まで行われている特別拝観 「東寺のすべて」展は、通年公開されている金堂(こんどう)、「立体曼荼羅」で有名な講堂(こうどう)、食堂(じきどう)の計3棟に加え、普段は公開されていない灌頂院(かんじょういん)などを同時公開。加えて空海が唐から請来した曼荼羅を元に制作されたと考えられている「国宝両界曼荼羅図」も公開される。
9世紀後期に作られ、彩色されたものでは現存する最古の両界曼荼羅の公開は10月21日まで。10月22日からは、空海が最澄に宛てた手紙「国宝 風信帖(ふうしんじょう)」の公開に切り替わる。21日、22日と一泊二日で東寺を訪れば、かなり貴重な旅となるだろう。

東北が生んだ巨匠・土門拳の代表作約50点を展示

五重塔斜陽 撮影:土門拳 画像提供/土門拳記念館

講堂五大明王像の内降三世明王像上半身 撮影:土門拳 画像提供/土門拳記念館

今回特別に公開されるのは、僧が生活の中に修行を見出す「食堂」で行われているのは土門拳の写真展だ。オリンピックの喧騒から逃れるように東寺を訪れた1964年、仏像と対峙し気迫もろともシャッターを切った土門。写真とリアル、その両方を楽しめるまたとない機会だ。作品展開催にあたり、山形の土門拳記念館を訪れた東寺の三浦さんは、お弟子さんたちと一緒に写真を選び、様々な話を伺った。土門は東寺の観智院の縁側に使われていた釘にたいそう興味を持ち、同じ釘を作らせたという。今回、その写真も展示される。

現代アーティスト・小松美羽さんの「ネクストマンダラ 」

ネクストマンダラ-大調和(斜陽・白黒) 画像提供/株式会社 風土

ネクストマンダラ-大調和(紅・彩) 画像提供/株式会社 風土

そして、世界で注目を集める美しき現代アーティスト・小松美羽(こまつみわ)さんの「ネクストマンダラ – 大調和」の展観。「陰陽・白黒」「虹・彩」の一対の曼荼羅は通常は非公開である灌頂院に掲げられている。空海の発案により始まった玉体安穏や五穀豊穣を祈る密教最高の儀式「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」が執り行われる普段非公開の神聖な場所だ。「描くという魂の修行から、大いなる宇宙、天への地図を授かったようだ」と感じ、産み落とされた曼荼羅は彼女の祈りだ。争い、葛藤、出口の見えない不安を抱えながら生きるすべての人の魂を包み、「ネクスト、次へ」と背中を押してくれる。

「東寺のすべて」展は10月31日(火)まで

最後に、東寺の三浦さんに今回の特別拝観の見どころについて伺った。

「土門拳といえば仏像のイメージが強いですが、写真展では1964年の東寺の風景や、大切に保管されてきたお大師さんの像、工芸品の数々を見ることができます。現代アーティスト・小松美羽さんが食堂で描き上げた曼荼羅の世界もまた、お大師さんと同じく異質なものを受け入れる対立ある大調和。時代は変わっても東寺には決して変わることのないお大師さんの祈りが流れています。講堂の北側の広場は秋の夕暮れ時、木立が美しいシルエットをつくり、開門の朝六時、誰もいない御影堂を歩けば、その清々しさに心が洗われます。特別な何かを見るということだけでなく、お大師さんが1200年の昔、この場所を歩き、確かにここにいらしたのだということを感じていただけたらと思います」。

真言宗立教開宗1200年記念特別拝観 「東寺のすべて」は、10月31日(火)まで。思い出に残る秋が私たちを待っている。

真言宗立教開宗1200年記念特別拝観 「東寺のすべて」
10月9日(日)〜10月31(火)午前9時〜午後5時


会場 真言宗総本山 教王護国寺(東寺)

https://toji.or.jp/information/toji1200th/

東寺音舞台
2023年11月12日(日)
深夜0時30分~1時24分 放送予定
(MBS・TBS系全国ネット)

出演
ギタリスト/MIYAVI
サクソフォン奏者/上野耕平
テノール/笛田博昭
振付家&ダンサー/大石裕香

真言宗総本山 教王護国寺(東寺)

住所
京都市南区九条町1番地
WEB
https://toji.or.jp/information/toji1200th/
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