PHOTO_池上勇人
TEXT_ナルトプロダクツ
余笹川の断崖を落ちる駒止の滝。その涼しい気配を感じながら下ると、まるで百年ほど時代を遡ったかのような威容が現れる。手前には、25mプールに匹敵する大きさの露天風呂。
玄関ホールと帳場がある正面の棟が、『北温泉』でいちばん古い、安政5年に建てられたもの。上階は「松の間」。安政時代の質朴な造りや意匠がほぼそのまま残されており、「天狗の湯」と外付けの打たせ湯「不動の湯」、家族風呂の「ぬる湯」、湯治客のための自炊場にも近い。明治期に建てられた棟の入口には、裏山の温泉神社へと至る参道が。江戸の昔、その源泉の岐路の多さから「岐多の湯川」と呼ばれたこの温泉は、同時に神仏の集う場所ともされ、身体と心の拠りどころとなった。「竹の間」や女性専用の「芽の湯」への廊下や階段には仏像や神像が祀られ、往時の記憶が遺されている。
昭和期建築の棟には、「梅の間」と白河の豪農の3つの建物から移築した食事処・亀の間が。囲炉裏を切った板の間、仕口に木彫を施した柱など、見どころも満載だ。こちらからの動線は、露天の「河原の湯」と、『北温泉』の代名詞ともなった「泳ぎ湯」、「相の湯」へも通じている。
■ Kappo 2020年1月号 vol.103 ■
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