写真、TEXT=編集部
東北の食と酒を産地で味わう新しい観光と食の形を提案するプロジェクト「テロワージュ東北」。
“テロワージュ”は、フランス語で気候風土と人の営みを表す「テロワール」と、結婚や料理と酒の組み合わせを指す「マリアージュ」を合わせた造語で、秋保ワイナリー代表の毛利親房さんが提唱し、生産者や飲食、酒造、観光関係者とともに、2019年からツアーや体験プログラムなどを実施してきました。
今回参加したのは、秋保ワイナリーが今後定期的に主催していく「テロワージュテーブル」。
東北の食・
第1回目は「お野菜だけのガストロノミーコースディナー」。
フード&デザインユニット LUNNY’S VEGGIEの料理家・藤田承紀さんと、
若林区荒井『Bistro Prunier』オーナーシェフ・松田龍之介さんがコラボレーションし、
動物性たんぱく質を使わないコース料理と、秋保ワイナリーのワインを合わせるスペシャルディナーです。
『秋保ワイナリー』代表の毛利親房さんからテロワージュについて、料理を担当するふたりのシェフからのあいさつ。
メニューの脇には料理に使用する食材と、生産者の方がずらり。宮城の食材の豊かさが伝え悪ないようです。
今回はワインのほか、お酒が飲めない人でも同じテーブルを囲めるようにと、料理に合わせてアルコールの入っていない「オルタナティブアルコール」を用意していました。
さあ、いよいよディナースタート。
まずは前菜「ズッキーニのケークサレ」と「メロンのブーケ」。
豆乳のケークサレにはすりおろしたズッキーニが練り込まれており、その上にミヤギシロメのフムス。フムスには、昨年松田シェフが漬けた、宮城県産マイヤーレモンの塩漬けが刻んで入っていました。
真鍮に包まれているのは、スパイスとひよこ豆で作る「パパド」。その中に「北釜クィーンメロン」が入っています。このメロン、一度は生産が途絶えたのですが、昨年復活したそう。添えてあるマイクロリーフは、以前Kappoでも紹介した『浅野農園』浅野さんのもの。秋保ワイナリーのワインで作ったワイン醤油とタイムの花、スマックというゆかりのような香辛料と合わせていただきます。
「カリフラワーのブランマンジェ」は寒天でゆるく固め、とろとろのテクスチャを実現。
カリフラワーの泡と、クルミのオイルでやさしい味わいです。
添えてあるのは、なんと湯剥きしたトマトの皮!
パスタに使うトマトの皮を乾燥させ、塩味で仕上げたもの。パリパリ食感でいい塩梅です。
藤田シェフ曰く「“つきだし”にはこれから出てくる料理の端材を使って、料理の期待度を上げることがある」とのこと。まさに、狙い通りです。
合わせるワインは、『秋保ワイナリー』の「バンジーシードル(甘口)」の2021年ヴィンテージ。亘理町の3軒の農家さんから仕入れた、木に実をつけたまま完熟させたフジだけで醸したシードルで、この日が初お披露目。
野菜の甘さとリンゴの甘さが互いの良さを引き立て合います。
アンティパスト「茄子と葡萄の葉のパコラ ペペロナータ」。
ひよこ豆の粉とスパイスをまとわせて揚げる“インドの天ぷら”パコラ。
ズッキーニの葉で包んだ茄子に衣を付けて揚げてあります。
ズッキーニの花の根元と、めしべがちょこんと添えてあります。
じっくり揚げてあるため、カラスミのような味がします。
ソースの「ペペロナータ」はパプリカをくたくたに煮込んだイタリア料理。
独特のスパイス感と、パプリカの甘さがちょうどいい味わいでした。
プリモピアット「カペラッチ セージバター」は、「このひと皿で秋保ワイナリーを楽しめる」と藤田シェフ。
帽子型のパスタ「カペラッチ」には、本来ならばリコッタチーズとほうれん草を合わせたものを詰めるそうですが、今回は豆腐と白味噌を合わせたタネが入っています。
ソースには、秋保ワイナリーのグレープシードオイル。
さらに、ワインを絞る際に残った皮を発酵させた天然酵母を用いたバゲットが添えてあります。
クリームチーズのような濃厚な味わいと、ほんのり香るブドウの甘い香りが、ワインによく合います。
リリース前の「シャルドネ 2021」は、ろ過することで輪郭がはっきりしている印象でした。
お口直しで供された「きゅうりとミントのグラニテ」は、モヒートをイメージ。
シャーベット状の甘いきゅうりは、まるでスイカのようでした。
セコンドピアットは「かぶもち、みらい、山椒オイル」。
大根餅ならぬかぶもちは、カブを片栗粉でまとめた、もちもちな仕上がり。
山椒オイルには秋保ワイナリーの「ヤマソービニヨン」で、彩りとコクをプラスしています。
カブの香りをしっかり感じつつ、トウモロコシの「みらい」の甘さと、山椒オイルのフレッシュさが合わさった、初めての味わいでした。
「クラフトバレー ブレンド ルージュ 2020」と合わせても負けない、力強いひと皿です。
SIME(〆)は「トマクイーンと佐藤錦の冷製パスタ」。
湯剥きしたトマクイーンをペーストにしたソースと、仕上げにヘタから絞ったオイルをたらり。トマトの青さが加わり、さらにトマト感が強くなりました。
大崎市『マルセンファーム』のトマクイーンは果物かと思うくらい糖度が高く、合わせた佐藤錦も驚いたはずです。
塩味が控えめなパスタに合わせたのは、「メルロー ロゼ」。
甘酸っぱい果実味が、トマトとも好相性。
ドルチェは「いり番茶のティラミス」と「フェンネルの花のソルベ」。
花ほうじ茶を含ませたパンに、豆腐とかぼちゃ、バニラアイスでティラミスを構成。
驚いたのはソルベ。一番始めに提供された大豆のフムスを作った際に出た煮汁「アクアファーバ」を、メレンゲのように泡立て、ソルベを作ったそうです。
カモミールの砂糖漬けも、いいアクセント。
最後の焼菓子まで、野菜を余さず使い切る姿勢が見て取れました。
2022年のテロワージュテーブルは、食だけにとどまりません。
次回は金継ぎのワークショップの後に、ワインと合わせたディナーが予定されています。
東北の食と人、風土を楽しむテロワージュテーブル。
今後の予定や情報発信は、『秋保ワイナリー』からチェックしてください。