TEXT=編集部
PHOTO=池上勇人
家で過ごす時間が増えている今、そろそろ家の掃除や整理整頓にも方がつき、次は何をしようか、とか、毎日在宅ワークで思うような気分転換ができない人も多いはず。この連載では、2019年に発売された『Kappo Vol.100』の巻頭特集「宮城の100人」でインタビューをした人たちに現在の状況や今後の話、そして“おうち時間”を楽しむヒントを聞いていきます。
仙台市民に花の魅力・楽しさを届けようと、仙台市内の花屋・フローリストが集結した『花降る街、仙台』。代表の青葉区本町にある『Magenta』山田 剛さん(中央)、副代表の青葉区国分町の『florico』鈴木啓示さん(左)と『Magenta』今野裕子さんを中心に活動を続けている。
自粛ムードが続く中、“フラワーロス”が世界的な問題となりつつある。
「花降る街、仙台」の代表であり、青葉区本町の『Magenta』代表の山田剛さんは、「お店のオープン祝いや店内のディスプレイ、イベント、ブライダル関連の仕事が、9割減。来店されるお客様は、ギフト、自宅用とコロナショック前とあまり変わらずですが、それでも4割は減っています」。
大きな花束をプレゼント、というよりも、「自宅に飾るためにと来店されるお客様が多いと感じます」(『florico』鈴木啓示さん)と、店の現状を話す。
それでも、このピンチを一つの好機と捉え、山田さんは「部屋に花を飾るということはどういうことかを体験し、それを新しい文化として根付かせていく取り組みに力を入れている」と言う。『Magenta』では、花を求めた人はそれに合う花瓶をレンタルでき、花と一緒に届けてくれるサービスを開始。
『florico』の鈴木さんは、外に出る機会が少なくて済むよう、「自宅で長く楽しめる花や枝物、飾り方のアドバイスや手入れ方法などを丁寧にお伝えしています。これからは、ネット販売にも力を入れていきたい」と、現在の環境に合わせた提案をしている。
自宅でも、植物のある生活を楽しんでいる3人。それぞれにアドバイスやポイントを聞いてみた。
『Magenta』の今野裕子さんは、「お花の水替えや手入れを朝イチのルーティンにして一日のリズムを作るようにしています。植物や水を触る事により、気持ちの良い一日をスタートする事ができます。 また、家での料理回数や時間が増えたのでベランダで パクチーやイタリアンパセリを育て始めました。自分で手をかけて育てたものは、スーパーで買うものよりも 美味しく感じられます。夏に向けて、ミントも育てようかと思案中です」。
鈴木さんは、「花瓶を選ぶ際はあまり口の広がっていない物の方が活けやすいです。余裕があれば大きいものと小さいものの2つを用意すると、いろいろな楽しみ方ができると思います」と花瓶の選び方についてアドバイスをくれた。
「家にいることが多くなり、外の気候を感じにくくなった今。古代中国の二十四節気七十二候という季節を表す考えを取り入れながら、花を飾るのもいいかもしれません。例えば、桜始開(さくらはじめてひらく)3月25日頃 であれば、桜を 蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃 であれば、蛙を思わせるたっぷりの水を入れた器に、端午の節句でもあるので花菖蒲や杜若を飾って季節を感じ、自然を思う。そんな時間と空間で楽しむお家時間を提案します」と山田さん。
毎日同じ景色の中で暮らすと、いくら天気が良くても気が滅入ってしまうはず。花を活けることで生まれる心の余裕。そんな余裕こそが、今必要なものかもしれない。
■ Kappo 2020年5月号 vol.105 ■
巻頭特集は「新 まち歩きの教科書」と題し、新しい“まち”の魅力を探しに出かけてみました。第2特集として「第3回 仙台短編文学賞」の大賞&プレスアート賞の受賞作品を全編掲載。10回目を迎えた「bonとponの宮城ふたり遊び」は、今回は『塩竈市杉村惇美術館』へおでかけしました(3月上旬取材撮影)。ぜひ本誌をご覧ください。
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