生活になくてはならない必需品ではないけれど、
持っているとちょぴり暮らしが豊かになる。
そんな大人の趣味・趣向を広げてくれる
愛すべきモノを紹介するのがこの連載。
探す楽しみ、手に入れる喜び、そして生活に何を
もたらすか、ひとつひとつのアイテムに眠るモノ語りを
丁寧に紡ぎます。どうぞお付き合いください。
おどけたような丸い目がなんとも愛らしい張子の鳥の置物。この存在を知ったのは10年ぐらい前のこと。昔関わっていた雑誌で全国の郷土玩具を紹介する企画を担当した際に出会い一目惚れしたこの「仙台張子 すずめ」は、松川だるまで有名な張り子製作所「本郷だるま屋」が制作するものです。こちらは通年作られているものではなく、年間で作られる数も10体前後と少なく、民芸ファンの間では幻の鳥なんて言われています。結局、その企画では紹介できず、雑誌では宮城の郷土玩具代表として鳴子の老舗木地工房「高亀」が制作する柳宗理がデザインした鳩笛を紹介した。だが、張子すずめの事がずっと忘れられず、東京から仙台へ帰郷した際は民芸店に足を運びチェックしていたがなかなか出会えず、手に入れたのはつい最近のお話。調べると5月の「青葉祭り」近くになると作られるとのことだった。GW時期を狙い民芸店に行ったところ、ひとつだけぽつんと飾ってあり、思わず店員さんに約8年越しで出会えた感動を伝えていた。
ついに手に入れた実物は、張り子らしく凹凸のある手作りの温かみが感じられるフォルムで、松川だるまを思わせるようなクリっとした丸い目の絵付けと糊でコーティングされた光沢のあるピンクの色合いが素敵。手乗りサイズながら玄関先や棚の上など、どこに飾ってもしっかりとした存在感を放ってくれてインテリアのアクセントにも最適です。そしてなによりとぼけたような表情は見ているだけで癒される。
今年は残念なことに「青葉祭り」は中止となってしまいましたが、「仙台張子 すずめ」は例年通り個体数は少ないながらしっかり制作され販売されています。今年は新型コロナウィルスの影響で、通常使用している和紙の流通が困難なため、「本郷だるま屋」の先代が保管していた「柳生和紙」という仙台産の和紙を使って制作した特別な仕様。ぜひこの機会に縁起物として側に置いてみてはいかがでしょうか。
仙台張子 すずめ 1,980円(税込)
※年に1回「青葉祭り」時期に販売、入荷は10数体と少数になります。入荷・在庫は「こけしのしまぬき本店」ホームページをご参照ください。
写真・文_鮫島雄一(編集部)