文=編集部
東日本大震災の発生から9年が経過。大きな被害をもたらした道路や住宅の復興を進める場所には遺跡があることもあり、宮城県は復興と遺跡保護を両立するために、地域の歴史を大切にしながら復興を推進する努力を続けている。例えば、山元町合戦原遺跡では、7世紀後半から8世紀前半の線刻壁画が描かれた横穴墓が見つかり、現地では保存できなかったものの、全国初となる壁画の移設保存が行われた。南三陸町大久保貝塚や多賀城市山王遺跡などでは、一日も早い復興に向けて現在も発掘調査が続けられている。
『東北歴史博物館』で開催される「みやぎの復興と発掘調査」では、これまでの宮城県の復興状況と、これら復興事業に関連して実施された遺跡の発掘調査成果を紹介。合戦原遺跡から出土した鉄剣や銅製壺鐙(どうせいつぼあぶみ)、花形杏葉(はながたきょうよう)などの馬具は、保存処理を終えて初公開となる。
復興事業に伴う遺跡の調査は、文化財を守りながらも復興推進の妨げとならないように、地域の人たちと約束した期限と範囲を守って実施。また、全国の自治体から派遣された調査員らの協力のもと、調査力を強化して取り組んでいる。本展は、新発見の文化財を紹介するだけではなく、復興事業に伴う発掘調査を振り返り、災害復旧・復興の中での発掘調査と文化財の保護について、改めて考える機会となるだろう。
■ Kappo 2020年5月号 vol.105 ■
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