取材・文=塚崎可久美
写真=池上勇人
8階/「深める」をコンセプトにデザインされた8階ラウンジは、クリエイティブワークやコミュニケーション活性化に最適なオフィス空間。左のソファ『ノーション』は、体を包み込むフォルムと周囲の視線を遮る大きなシェードが安らぎのときを演出。まるでカフェの特等席のようなスペースだ。
8階/サンプルやカタログが並ぶアトリエスペース。デスクは高さを変えられるので、「立つ・座る」を気分で選べる。
8階/プレゼンやリモート会議のためのオープンな空間。縦長の机自体がスピーカーの役割を成し、後方の人も聞き取りやすい仕掛け。昼休みには集いのスペースに。
『コクヨ東北販売株式会社』の社内は、2017年に場所と時間を自由に選択して働く、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)対応のオフィスにリニューアル。窓辺のカウンターで、座り心地の良いソファで、あるいは個室の集中ブースで、各々がその日の業務内容に合わせて好きな場で働き、部門の垣根を越えたコミュニケーションをとり合っている。
そう、ここはもはや職場(2nd place)と寛ぎの場(3rd place)の中間の「2・5 place」。快適な業務のための機能を持ちつつ、お気に入りのカフェでゆったりと仕事をする感覚に近い。働き方を選べる時代だからこそ、もっと快適に、革新的に。効率と創造性を高めるオフィスの新たな形だ。
『コクヨ東北販売』のライブオフィスを統括する小林武人さんは、「在宅勤務が増え、オフィスに通勤し、人と話すことが気分転換になる時代です。集中、リラックス、対話など、これまでの一様なオフィス機能ではなく、多様な機能、変化に柔軟に対応できる環境が求められています」と語る。
オフィスカイゼン委員会の一員として環境作りに携わる小座間和成さんは、「働く場所を変えることで、仕事のスピードが上がった」という。好きな空間で気分転換しながら働くことで、集中力が保てるのだという。
『コクヨ東北販売』の「ライブオフィス」を統括する小林武人さん。
8階/上座を無くし、向かい合う人と視線が合わないように設計した会議室。レンガの壁や照明にもこだわりが。
8階/一人での集中作業のための『ワークポッド』。防音性が高く、web会議にも最適。密閉空間だが、ガラス面が広いため開放感もあり。
『コクヨ』が、1969年から続けるプロジェクトが「ライブオフィス」だ。一般の人でもオフィスを見学できる(予約制)思い切ったもので、社内で蓄積したワークプレイスの実例を自らが実験台となって具現化し、活用術を紹介している。
「お客様に先駆け、自ら実践・検証してみるのがライブオフィス」と話す小林さん。例えば、フリーアドレス導入当初は、メンバーの所在が不明になる問題があったが、週に一度グループアドレス制を採用し、デジタルをうまく活用することで解決したという。
小座間さんは、「フリーアドレスのおかげで整理整頓が身に付き、ちょっとした議題はオープンなカンファレンススペースで話し合えるので、会議の時短も実現しています」と話す。
営業部リーダーの小座間和成さん。この和室もオフィスの一角。「靴を脱いで働ける癒しの空間です」。
『コクヨ東北販売』の現在のオフィスのコンセプトは、TIMEの逆さ文字、『EMIT(エミット)』。時間に対する概念を変える働き方を表す。
オフィスは3つの役割に分かれる。
8階のラウンジは「深める」フロア。提案書の作成や設計などクリエイティブなワーク、チーム内や取引先とのコミュニケーションの活性化に向いている。
4階は作業系の仕事を行うコワーキングスペース。「繋ぐ」がキーワードとなる。機能が異なるチェアやデスクを装備。社員がそれぞれの姿勢や業務内容に合わせて自由に選ぶことができる。打ち合わせブースもオープンとクローズの2つを設置。ちょっとしたミーティングからWebまで幅広く使える。
そして5階が「籠る」フロア。機密度の高い仕事や超集中ワークに最適な個室を備える場だ。Web会議が主流になりつつある今、個室型ブースの需要は高まっているという。
さらに、視覚、嗅覚、聴覚効果も重要。パーティションを低くして圧迫感を軽減したり、集中力を高めるアロマを香らせたり、観葉植物を飾ったり。また、空調音に似たサウンドマスキング音を流し、雑音を気にせず仕事に没頭できる工夫を行っている。
4階/半円形の管理職席。扇形に広がるので隣の人も視覚に入らず広々。内部へくるりと振り返れば、その場でミーティングも実現。
4階/様々なチェアとデスクを設置。気分転換の効果を生んでいる。
4階/窓辺のカウンター席は、まるでカフェのよう。通りの様子を横目に作業が捗る。
4階/社内で人気の昇降式デスク。立って図面を描いたり、腕を高くしてパソコンを打ったり。
4階/フリーアドレスでは、文具はオフィス全体でシェアするのがおすすめ。置き場を固定することで補充も一目瞭然。
4階/防音パネルで囲まれたソファタイプの打ち合わせブース。web会議にも活躍。
5階/ 通称「ファミレス席」と呼ばれるブース(写真右)。自宅の書斎のような落ち着いた雰囲気。
5階/ 調湿と吸音パネルが設置された一人用の「サイレントルーム」。役職に関わらず全社員が予約できる。
5階/ 吸音パネルを配置した5F会議室。室内照明を暗くすることで、リラックスして会議に臨めるという。
『コクヨ東北販売』では、設計プランニング、システム運用を含めたオフィスづくりをサポート。新しい働き方が求められる時代、居心地とコミュニケーションを生む場としての役割が強まるオフィス。快適な空間をデザインすることで、働く人に優しい付加価値を生み出すのはいかがだろう。