取材・文=塚崎可久美
写真=池上勇人
『コクヨ東北販売株式会社』の社内は、2017年に場所と時間を自由に選択して働く、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)対応のオフィスにリニューアル。窓辺のカウンターで、座り心地の良いソファで、あるいは個室の集中ブースで、各々がその日の業務内容に合わせて好きな場で働き、部門の垣根を越えたコミュニケーションをとり合っている。
そう、ここはもはや職場(2nd place)と寛ぎの場(3rd place)の中間の「2・5 place」。快適な業務のための機能を持ちつつ、お気に入りのカフェでゆったりと仕事をする感覚に近い。働き方を選べる時代だからこそ、もっと快適に、革新的に。効率と創造性を高めるオフィスの新たな形だ。
『コクヨ東北販売』のライブオフィスを統括する小林武人さんは、「在宅勤務が増え、オフィスに通勤し、人と話すことが気分転換になる時代です。集中、リラックス、対話など、これまでの一様なオフィス機能ではなく、多様な機能、変化に柔軟に対応できる環境が求められています」と語る。
オフィスカイゼン委員会の一員として環境作りに携わる小座間和成さんは、「働く場所を変えることで、仕事のスピードが上がった」という。好きな空間で気分転換しながら働くことで、集中力が保てるのだという。
『コクヨ』が、1969年から続けるプロジェクトが「ライブオフィス」だ。一般の人でもオフィスを見学できる(予約制)思い切ったもので、社内で蓄積したワークプレイスの実例を自らが実験台となって具現化し、活用術を紹介している。
「お客様に先駆け、自ら実践・検証してみるのがライブオフィス」と話す小林さん。例えば、フリーアドレス導入当初は、メンバーの所在が不明になる問題があったが、週に一度グループアドレス制を採用し、デジタルをうまく活用することで解決したという。
小座間さんは、「フリーアドレスのおかげで整理整頓が身に付き、ちょっとした議題はオープンなカンファレンススペースで話し合えるので、会議の時短も実現しています」と話す。
オフィスは3つの役割に分かれる。
8階のラウンジは「深める」フロア。提案書の作成や設計などクリエイティブなワーク、チーム内や取引先とのコミュニケーションの活性化に向いている。
4階は作業系の仕事を行うコワーキングスペース。「繋ぐ」がキーワードとなる。機能が異なるチェアやデスクを装備。社員がそれぞれの姿勢や業務内容に合わせて自由に選ぶことができる。打ち合わせブースもオープンとクローズの2つを設置。ちょっとしたミーティングからWebまで幅広く使える。
そして5階が「籠る」フロア。機密度の高い仕事や超集中ワークに最適な個室を備える場だ。Web会議が主流になりつつある今、個室型ブースの需要は高まっているという。
さらに、視覚、嗅覚、聴覚効果も重要。パーティションを低くして圧迫感を軽減したり、集中力を高めるアロマを香らせたり、観葉植物を飾ったり。また、空調音に似たサウンドマスキング音を流し、雑音を気にせず仕事に没頭できる工夫を行っている。
『コクヨ東北販売』では、設計プランニング、システム運用を含めたオフィスづくりをサポート。新しい働き方が求められる時代、居心地とコミュニケーションを生む場としての役割が強まるオフィス。快適な空間をデザインすることで、働く人に優しい付加価値を生み出すのはいかがだろう。