PHOTO_池上勇人
TEXT_ナルトプロダクツ
「学校に泊まってみたい」。そんな幼い頃の小さな夢が叶う宿、それが南三陸町の『さんさん館』だ。昭和初期に建てられた、木造の校舎。杉の下見板張りの壁が古色蒼然とした風合いで、何とも懐かしい。宮大工として活躍した地元の気仙大工が、地元の木材を使って建てたこの建物は、東日本大震災の時でさえびくともしなかったという。板張りの廊下は角に丸みを帯びて、水飲み場や窓の建具、壁掛け式の呼び出し電話機は数十年前から時が止まったようにそこにある。
1954年から続く45年の歴史に幕を下ろし、いちどは取り壊しの話まで出た林際小学校。その存在を惜しんだ卒業生たちが中心となって行った保存活動の結果、2001年に南三陸エリアのグリーン・ツーリズムの拠点として再生を果たした。今ではひと月ごとに1つから7つほどの季節感豊かな体験プランが楽しめ、その幅も農業から漁業、林業、伝統食やものづくりと実に広い。教室を改築した客室にも、小さな学習机や椅子、教材などの面影が活かされ、古い思い出を呼び覚ます。
■ Kappo 2020年1月号 vol.103 ■
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