写真=齋藤太一 TEXT=編集部
Kappo5月号の巻頭特集「東北とアート」の中から、4月15日(土)に春の展示が始まる『青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)』をご紹介します。
八甲田山の麓、市内中心部に比べると、雪が多い地帯。残念ながら野外彫刻の大半は、まだ3月も上旬のころには雪に覆われていた。
現代美術を扱う複合施設の先駆けとも言える『国際芸術センター青森(ACAC)』。
青森市政100周年を記念して2001年に市民とアーティストの交流の場として開館した複合施設だ。
建物は、安藤忠雄が「見えない建築」をコンセプトに設計。
ぐるりと半円を描くような展示棟、直線的な宿泊棟・創作棟の3つの建物が、森に抱かれるように佇む。
その土地に滞在し、環境や文化、歴史など、様々なものに取材して制作を行う「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」の手法をとり、常設展示は野外の彫刻のみ。
学芸員の慶野さんは「国内でAIRを中心に行う施設の中でも、『ACAC』は特に展示棟がしっかりしています。AIRの成果は美術作品に限らず、演劇やダンスといったパフォーミング・アーツも含まれるので、どんなものでも成果を市民に向けて発表できるようなつくりです」と話す。
年間約3回の展覧会のうち、春は鑑賞できる個展などの美術作品が中心。
夏と秋は、『アーティスト・イン・レジデンスプログラム』の一環でAIRを行い、一つは学芸員の企画によるAIR、もう一つは公募などで広く門戸を開いている。「地域を取材する場合、情報の切り取り方によっては、いかようにもなってしまう。
ただの消費にならないように、この場所で制作することに意義がある人たちを選ぶように心がけています」
国内外から訪れるアーティストは、宿泊棟に寝泊まりしながらリサーチや制作活動を行う。
長い人だと3ヵ月近く滞在するという。慣れない土地での制作活動を支えるのが、市民や学生をはじめとするサポーターたちだ。
中には「AIRS」と呼ばれる市民団体を組織している人もおり、施設のボランティアではなく、アーティストのサポーターとして、リサーチや地元の人との橋渡し、制作の補助などに幅広く携わる。
自分たちと過去訪れたアーティストとのコミュニケーションの成果を発表するイベントを自主的に開催したり、AIRSに長い期間関わっていた人の中には、ギャラリーを開いた人もいるほど、積極的に参加している。
「こぎん刺しなど、冬の青森は制作活動が盛んな地域で、歴史や人物、文化など地域への興味が強い人が多い。
国内外の視点とともに、この場所で作り、発表すべき作品を作り上げることで、青森にいながら異文化や世界と交流できる。仙台経由や東京経由ではなく、青森と世界が人を介して直接つながれる場所。
近年は、アートの動向としても暮らすことに着目し、作品に直結することも多いんです。
アーティストにとっても様々なものや人々に出会い、チャレンジができる場所だと思います」
『ACAC』は2021年12月に20周年を迎えた。
外との交流で生み出される新しい価値観とともに、これからも青森の〝アート人〞を送り出すだろう。
「発現する布―オセアニアの造形と福本繁樹/福本潮子」
期間/2023年4月15日(土)~6月18日(日)10:00-18:00
会場/青森公立大学 国際芸術センター青森 展示棟ギャラリーA・B
https://acac-aomori.jp/program/2023-1/
南太平洋メラネシアのタパ(樹皮布)や編み布など、織物以前から伝わる手仕事による布と、オセアニアと日本の造形論への洞察を通して「染め」にしかできない表現を追求してきた福本繁樹、そして藍のもつ透明感や精神性を美術へと昇華し、近年では地方の生活と労働の中で作られ使われた古い自然布を用いた作品展開を見せる福本潮子、3つの作品群によって、布でしかなし得ない表現、ひいては表現媒体としての布の可能性について考えていく。