写真=齋藤太一 TEXT=編集部
Kappo5月号の巻頭特集「東北とアート」の中から、4月29日(土)から展示が始まる、青森県八戸市の『八戸市美術館』をご紹介します。
青森県内初めての美術館は、八戸市にあった。
税務署だった建物を活用した美術館は設立当初、「八戸市博物館」の分館という位置づけで、地域にゆかりのある作家の作品を収蔵し、数多くの展覧会を開催してきた。
しかし、建物の老朽化や機能的な不足があったことと、市民からの声が後押しとなって、美術館としての建物を新設することが決定。
2021年11月3日、待望の再オープンを果たした。
飲食店や背の高いビルが立ち並ぶ、八戸の中心部に位置。
商店街から1本入ると、途端に開けた空間に、真新しいであろう建物が現れる。
新生『八戸市美術館』は、「種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館〜出会いと学びのアートフ
ァーム〜」がテーマ。
新しい建物は「ジャイアントルーム」と呼ばれる、高さ18mの吹き抜けの空間を中心に構成される。
訪れた日はちょうど休館日だったが、平日にはノマドワーカーとしてパソコンに向き合う人や、学校帰りに宿題をする小学生など、さまざまに利用されているそう。
「皆さんに使い倒してほしいと思っています」と話すのは、学芸員の平井真里さん。
「ここは出会いと学びのアートファーム。市の中心部にある施設なので、街との連携がいちばん大事だと考えています。どうしたらおもしろいか、という発想を持つ人が育っていくことが、街の豊かさにつながり、一人ひとり
の成長がやがては街の成長につながると信じています」。
企画展では、名高い絵画を紹介したり、国宝が展示される予定も今はまだない。
中心になるのはアーティストや学芸員、市民が一緒に学び、活動し、制作し、新しい価値を見出す「プロジェクト」だ。
自分が関わったものが作品になる。
パフォーマンスであれば、披露する場がある。
そういった体験を通じて、八戸の未来の担い手を育んでいくことが大きな目的。
参加することで、作品ができる過程や作家の意図など、今まで見たこと・感じたことのない新しい視点ができるかもしれないという考えだ。
4月29日から予定されている企画展「美しいHUG!」は、プロジェクトが2022年6月からスタートし、その間アーティスト・タノタイガ氏の作品《タノニマス》のためにお面の制作をしたり、きむらとしろうじんじん氏の野点を開催したりと、活動を続けていた。
「一部の人のものだけだった美術が一般に公開され、参加型の美術展が開かれるようになった。『八戸市美術館』はその先の、一緒に考え、一緒に作る美術館。第四世代となる可能性がある、なんて言ってます」。
本来、アートとは難しい顔をして鑑賞するものでも、苦手意識を抱く対象でもなく、人生を豊かにするものである。
八戸市民にとって、美術館はとても身近なものになることだろう。
なにせ、これから一緒に〝作っていく〞のだから。
2022年6月からプロジェクトがスタート。その間、アーティスト・タノタイガ氏の作品《タノニマス》のためにお面の制作をしたり、きむらとしろうじんじん氏の野点を開催したりと、活動を続けていた。その成果を展示・発表する。