歴史あるブドウ産地・山形県上山市はいま、“おいしいワインの産地”として認知を広めつつある。
“かみのやまワイン”の魅力はどこにあるのか。
ワインジャーナリストの石井もと子さんにお聞きした。
近年、日本ワインは世界水準の評価を受けており、“かみのやまワイン”への注目度も増している。
その理由を、石井さんは「良質な日常ワインを造りつつ、こだわりを捨てない個性的な造り手の存在。そのベースとして、やはり品質のいいブドウの産地だという点にある」と話す。
山形県上山市には4軒のワイナリーがある。
「土づくりにこだわり続け100年の歴史を持つ『タケダワイナリー』の岸平さん。『ウッディファーム』の木村さんは果樹農家としての経験則に基づいた高品質なブドウ栽培を実践し、『ベルウッドヴィンヤード』の鈴木さんは著名ワイナリーの醸造責任者という地位を捨て栽培醸造を一貫して行い、理想のワイン造りを目指している。そして、ブドウの力をひたすら信じる『DROP』の出来さん。造り手それぞれの強烈な個性を、優れたブドウに上乗せするのですから、ワインが輝くのは当然のことですね」
石井さんは上山の懐の深さにも着目する。
「町のサイズはコンパクトなのに、訪れるたびに新たな発見がある所。造り手の個性をヴィンテージごとに楽しむのがワインの醍醐味ですが、ここに来ればそれも可能。温泉街も充実しています(笑)」
「上山には凄腕農家がいます」と石井さん。
『JAやまがた南部営農センター果樹部会ワインぶどう部会』と『南果連協同組合ワイン部』の面々だ。
国内トップランクのワイナリーがその技術にほれ込み、原料としての購入が相次いでいる。
「酸味があり味わいの濃いデラウェアが示す通り、ブドウ栽培に適した自然環境に加え、彼らには手腕もあります」。
特に石井さんが評価するのがボルドー系品種。
「カベルネ・ソーヴィニヨンは上山の風土向き。クオリティは年々向上しています。またカベルネ・フランのエレガントさは他の国にはないイメージで将来性を感じます」。
デラウェアの評価も高い。
「上山のデラはワインに向いています。しっかりした酸が残りメリハリのあるいいワインになる。和食にも合わせやすいですね」
耐病性があり高温でも栽培しやすいアルバリーニョとプティ・マンサンに取り組む生産者が増えていることにも言及。
「塩尻メルローのような代名詞的品種になるか、今後が楽しみです」。
上山でワイナリー設立を目指す生産者たちにも期待を寄せており、「上山の展望は君たちにかかっている!」と『ラ・ファミリア』の國吉一平さん、『アグリクール』の片寄広朗さんを激励した。
「彼らが造るいいワインが、消費者や新規参入者をつないでくれると思います」。
ワインの産地形成へ、かみのやまブランドは大きく動き出している。
2023年4月にオープンした『山形ワインカーヴ』は上山市内のワイナリーのほか県内各地のワインを飲めて買える、ワインに特化した貴重な店。
試飲は常時12種類を用意。
ジュースや簡単なつまみもある。
JRかみのやま温泉駅から徒歩30秒。
豊富な品揃えが好評で、かみのやま温泉の宿泊客はチェックアウト後に立ち寄り、試飲後にボトルを購入することが多い。
発送も可。
上山城周辺を会場に山形県内外から個性派ワイナリーが大集結する、東北最大級のワイン祭り「山形ワインバル」。
2024年は2日間の開催に!
もちろんワインに合う料理屋台も多数出店。
イベントに関する情報は公式サイトで随時発信するので要チェック!
山形ワインバル・山形ワインカーヴ公式サイト
https://www.yamagatawinebal.jp
公式instagramはこちら
※Kappo vol.126(2023年10月5日発売号)より引用しています。
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