写真=鈴木信敏 TEXT=鎌田ゆう子
果樹栽培が盛んな岩手県花巻市は、ワインとシードルの特区に認定されています。市内に6軒あるうち、4軒のワイナリーが集中している大迫地区。岩手県内最古のワイナリーや、新規就農してワイン造りにチャレンジしている人など、多種多様。個性あふれる大迫地区のワイナリーを訪ねてみました。今回は『高橋葡萄園』をご紹介します。
大迫町で生まれ育ち、地元の有名ワイナリーで15年余のワイン醸造経験を経て独立した高橋喜和さん。
2012年、オリジナルブランド『高橋葡萄園』を立ち上げ、ブドウ栽培農家でもある実家の畑で採れたブドウを使って委託醸造を開始し、その3年後に念願の自家醸造所を設立した。
栽培においては、「ワイナリー勤務時代に研修先のオーストリアで得た『ワインは文化である』『ワインの品質はブドウ畑で育つ』という教えがモットー」と話す高橋さん。
土中微生物の活動を活発にするため、除草剤をほぼ使用しない草生栽培を実践し、房の段階で丁寧に選果を行って実のポテンシャルを高め、ほぼ全量自家栽培ブドウでワインを仕込む。
醸造もまた、大迫のテロワールを最大限表現するためシンプルに。
もろみに負荷をかけないようポンプではなくバケツで手運びし、補糖や酸化防止剤の使用も極力控え、瓶詰めも非加熱で行う。
こうすることで、大迫のワインらしい酸がありながら、それでいて芯もある、フレッシュで香り高いワインが生み出されるのだ。
ワイン造りに携わって通算20数年。
この地の気候風土を知り尽くした生産者が醸すワインは、大迫に根付いた文化そのものであることを気づかせてくれる味わいに満ちている。