写真=鈴木信敏 TEXT=鎌田ゆう子
果樹栽培が盛んな岩手県花巻市は、ワインとシードルの特区に認定されています。市内に6軒あるうち、4軒のワイナリーが集中している大迫地区。岩手県内最古のワイナリーや、新規就農してワイン造りにチャレンジしている人など、多種多様。個性あふれる大迫地区のワイナリーを訪ねてみました。今回は『大迫佐藤葡萄園』をご紹介します。
『大迫佐藤葡萄園』の園主・佐藤直人さんの経歴は異色だ。
医療機器メーカーのエンジニアとして勤務していた30代のころ、赴任先のヨーロッパでワインに目覚め、ワイン造りの夢を
実現するため2016年に56歳で早期退職。
地元・花巻市に戻り、大迫町内で園地を借り受けて2017年シーズンよりブドウ栽培をスタートさせた。
2020年末にワイナリーも開設し、2022年には健全な自家栽培ブドウのみで醸したファーストヴィンテージを発売。
名実ともに憧れのドメーヌとなった。
ワイナリーの大きな特徴は、データ活用により栽培管理を行う〝スマートワイナリー〞を掲げていること。
畑に並ぶ1本1本の樹を列と行でマトリックス管理し、それに過去の気象データや栽培暦を重ね合わせ、個々の樹の現状を分析しながら徹底した栽培管理作業を行う。
1年かけて収集した栽培データは、PDCAサイクルにより次の年の栽培へと活かす。
「就農するまで農業経験ゼロだった私が頼れるもの、それが元技術者としてのデータ分析スキルだったんです」と佐藤さん。
目指すのは、和食との相性が良く、ずっと飲み続けていられるような深みのあるワインだという。
その理想の味に向けて、一年一年、新しいチャレンジを積み重ねていく。