Kappo 仙台闊歩

TRAVEL 2023.07.26

みちのくの小京都・角館で 本物の蔵に泊まる贅沢 秋田県仙北市『和のゐ角館』【Kappo2023年7月号】

写真=鈴木信敏(ノブフォト) TEXT=菅原ケンイチ

新緑から深緑へ移り、東北全体がいきいきとしてくる季節。おでかけ機運が高まっている方も多いかと思います。東北ならではのもてなしや食、文化を感じられる宿をピックアップした7月号の巻頭特集「東北を感じる宿」から、秋田県仙北市の武家屋敷通りにある旅館を紹介します。

『和のゐ角館(わのいかくのだて)』(秋田県仙北市)

2階はベッドの寝室。屋根裏は天井がないので、重厚な梁や棟柱が頭上に見える(写真は西宮家武士蔵)。

みちのくの小京都で
本物の蔵に泊まる贅沢

「西宮家ガッコ蔵」の浴槽はテーマに合わせた漬物樽がモチーフ。春は窓の外に角館名物の桜が咲く。

「西宮家武士蔵」の1階。太い木材は蔵独特のもの。武家のモチーフとして甲冑や紋の入った幕が置かれている。3蔵すべてが囲炉裏でくつろぐスタイル。

2階にはいずれも寝室と座敷の空間があり、結構な広さが確保されている。ベッドはシモンズ社製(写真は 西宮家ガッコ蔵)。

観光の中心地である「武家屋敷通り」。黒塀や大きな樹木は江戸時代 の城下町の姿を今に伝えている。

東北有数の観光地、角館。
ここは江戸時代の武家町の姿を今に残しており、町の北部の「武家屋敷通り」周辺は、歴史的な文化遺産として国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている。
『和のゐ角館』はJR東日本グループが運営する宿であり、町中に残っている蔵をそのまま利用しているのが大きな特徴だ。
開業は2020年。
宿名の「ゐ」は「居」つまり古くからの暮らしを表しているという。
3棟ある蔵はすべて一棟貸しで、歴史ある城下町で贅を尽くした蔵建築を堪能しながら宿泊するという、日常を離れた体験ができるのである。
角館には武家屋敷通りが2つあり、南の「田町武家屋敷通り」の一角に西宮家の広い敷地がある。
西宮家は田町に居住していた今宮武士団の重臣であり、明治維新後も地主として大いに栄えた家という。
敷地内には5つの蔵と母屋が残されており、そのうちの2つの蔵が「和のゐ角館」の宿泊施設になっている。

通りに面した「西宮家武士蔵」は西宮家が最も繁栄していた時期の大正8(1919)年に建てられたものだ。
宿へのリノベーションは、できるだけ手をかけないよう意識されており、重厚な梁や棟木なども頭上すぐに見ることができる。
引き戸などの建具や調度品も贅沢に拵えたもので、この蔵のテーマに沿って置かれた甲冑や刀を見れば、当時の武士の暮らしに思いが至る。
「西宮家武士蔵」に並んである「西宮家ガッコ蔵」も同じく大正8年建築の、漬物の貯蔵用に使われていた蔵だ。
1階はくつろぐための居間と浴室、2階がベッドの寝室になっており、3棟いずれもが同じ構成である。
もうひとつ、武家屋敷通りに隣接している「反物蔵」は江戸時代末期建造の蔵であり、そこにかつては反物屋があったと伝わっている。
蔵の重厚な造りからは、よほど大きな商家だったことが想像される。

日本の古い建物は、昭和の時代にほとんどが取り壊され、その中には歴史的な建造物も含まれていた。
かつての富裕層が贅を尽くして造った蔵や家屋は、今の時代に建てるには膨大な費用が掛かるとともに、そのための職人がほとんどいなくなっている。
それだけに今に残されている歴史的な建造物は後世に伝えるべき遺産であり、そこに宿泊することは極めて貴重な体験といえるのだ。
角館は江戸時代に、秋田を治めた佐竹氏の分家である佐竹北家の城下町として栄えた。
中心部の町割りは400年前当時から変わっておらず、広大な敷地の武家屋敷と、敷地内の大きな樹木が豊かな緑を形成している。
このように「面」として城下町の景観が残されているのは全国的にも極めて貴重であるため、国が重要保存地区に指定しているのである。
町中の樹木にはしだれ桜とモミジが多く、春の桜と鮮やかな新緑から、秋の紅葉も美しい。
そして近年は日本情緒あふれる雪景色を求めて、アジアからの観光客も多く訪れている。

和のゐ角館(わのいかくのだて)

住所
秋田県仙北市角館町中菅沢14
電話
0187・53・2774 (和のゐ角館専用電話)
備考
宿泊料金/ 1人1万5500円~(1室2名利用時) ※すべて1棟貸しで食事は朝食のみ が基本。別途夕食希望の場合は ホテルフォルクローロ角館にて。

Kappo7月号は、宮城県内の書店、Amazonマチモールほかで発売中。

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