PHOTO_菊池淳智
TEXT_菅原ケンイチ・編集部
これまでKappoWEBでご紹介してきた、“宮城・仙台そばの名店”10店をイッキ見せ!
じめじめとした蒸し暑さが長引く今時期はどうしても食欲が無くなりがちですが、そんなときこそ選びたいのがそば。
そばに含まれるビタミンB1・ビタミンB2は、疲労回復や身体の免疫力を高める効果があります。ツルっとさっぱり食べられて、まさにこの時期の強い味方です!
ご紹介したお店はすべて昨年発行した『本当にうまいそばの名店・宮城』に掲載中。店舗によってはテイクアウトを実施していたり、夏季限定メニューを提供しているところも。
ぜひ今年の夏は、そばの名店に足を運んでみてはいかがでしょうか?
太白区向山。広瀬川を見渡せる坂野通り沿いにある『鹿落堂』は、2017年にオープンしたそばと甘味の店。カフェのような明るい店内。広い窓からは広瀬川と仙台の街が見える。
ここは自家製粉の店。仕入れる原料のそばは鳴子の川渡産の信濃一号がメイン。そばは十割と二八の2種類ある。玄そばを粗く挽きくるみした十割はつながりが見事で、水で打ったとは思えないほど。透明感があり、弾力のあるコシと豊かな風味が特徴だ。
仙台市中心部の東二番町通からひとつ裏手の通り。喧騒から外れた一角に『山がた』はある。店名は店主山形俊介さんの名から。「山形風そばを出しているわけではないですよ」と笑う。定番の「ざるそば」(上画像)は、山形県産わかおりが主体の石臼挽きのそば粉を使用している。
そばを味わう昼の部だけでなく酒を嗜める夜の部もあり、営業が再開している。場所柄飲みに訪れるサラリーマンも多く、江戸っ子のように「そば屋のつまみで飲んで、さっとそばをたぐる、そんなお客さんが多いとうれしいです」と山形さん。メニューは板わさ、玉子焼き、ふぐ子など、通好みのつまみがそろう。
『おもたか』は夜も営業する「そばと酒の店」。取材時に店で提供していたそばは福井産の「永平寺在来」を使った二八と、栃木産の「常陸秋そば」を使った十割。いずれものど越しのいい細打ちである。
そばは基本的に粉で仕入れ、自家製粉した粉をブレンドしている。製粉は石臼の手挽き。「石臼を手回しした方が粒度分布が広がります」と店主の白幡太志さん。
粒の細かい粉はつながりをよくし、粗い粉はそばの香りや風味を引き出してくれる。
つゆは返しとだしを合わせ、湯せんを2回かけて寝かせている。
「ただうまいだけではなく、そばとの相性も大事です」と語る白幡さん。まろやかで奥行きがある味わいは、割烹店に12年勤めていた白幡さんだからこそなせる技だ。
青葉区中山の『康正庵』。ここは仙台でも老舗の手打ちそば店であり、正統の二八そばが味わえる名店だ。
「のどごしのよさと、何枚でも食べられる飽きの来ない味、そして種物(温かい汁のそば)でも伸びにくいのが二八のいいところだと思います」と店主の大内さん。
細くきれいに打たれた二八の「せいろ」は角がしっかりと立ち、もっちりとしなやかなコシと爽やかなのどごしが素晴らしい。
二八でありながら香りがあるのは粉がよい証拠だろう。
一方の「田舎」は挽きぐるみ中太の強い味わい。そして更科の真っ白な「しらゆき」はなめらかなコシが持ち味だ。
『康正庵』のつゆは東京風の辛め。なので、そばを軽くつけて一気にすすりたい。
大和町宮床。国道から少し入った場所の里山の風景に溶け込んだ民家が『七ッ母里』の店舗だ。
ここで振舞われるそばのそば粉は愛子産の常陸秋そばをはじめ、時期ごとに国内各地から入れている。
そばはそば粉十に対してつなぎ一の外一、新そばの時期には十割も出る。
そばとともに季節感あふれる里山料理も人気で、約10品出る「旬菜小鉢膳」は予約がおすすめ。
冬期は真鴨やキジなどのジビエを使った料理を味わえる。
四季折々の里山の風景とともに食事を楽しむ、贅沢なひと時を過ごせそうだ。
宮城にいながら山形スタイルのそばが食べられる人気店『萬乃助』。泉本店の店舗は地区80年の古民家を利用しており、広い座敷が何とも落ち着く。
ここのそばは自家栽培、自家製粉のものだ。山形の村山にある10ヘクタールの畑にでわかおりと最上早生を作付けしており、山形産100%の玄そばを毎日石臼の挽きぐるみで製粉している。
基本の二八は太さを3種類から選べるが、「一般より太目なので、最初は細打ちをおすすめしています」と社長の五十嵐勇一さん。他にも限定10食の十割そばがある。店のメニューには「げそ天」、「冷たい肉そば」、「ひっぱりうどん」など、山形ならではのものが並ぶ。
まるでカフェを連想させるカジュアルな店構え。ちょっぴりユニークなそば屋が泉区鶴が丘にある。長野県でフレンチシェフを経験した後、善光寺前の名店でそばの修業を積んだ店主の和田栄二さんは、フレンチと信州そばを融合したメニューで来る人を驚かせてくれる。
そばはしなやかなコシを持ち、風味と甘みを感じさせるもの。長野産信濃一号の丸抜き石臼挽き粉を使い、粗めの粉もブレンドした二八。打ち方も長野のスタイルなのだそう。
「そばになじみのない世代も気軽にそばを楽しめるように、前菜やデザートにも力を入れています。色々なそばの食べ方があるのだと伝えたい。フレンチシェフ時代の経験を活かして、和洋折衷を意識したメニューを考案しています」と、和田さんは胸を張る。
女性に好評なスイーツの盛り合わせも『蕎花』ならではのバラエティの豊かさ。「そば茶のブランマンジェ」など、いま一度そばの魅力に気付かせてくれる。「ランチコース」は平日限定だが夜営業時も注文できるので、ぜひ味わってみてほしい。
『花いかだ』は、岩沼から西に入った里山の山合いにある。下草の手入れされた雑木林。春はアズマイチゲやニリンソウが咲き乱れ、夏はキツネノカミソリでオレンジ色に染まるそう。里山ならではの新緑や夏の緑、秋の紅葉、葉の落ちた明るい冬の景色など、四季を通じて美しい風景が楽しめるという。
庭や山の手入れをしているのは、店主の父。ここで採れた山菜やタケノコ、隣家の柚子なども料理に使われている。敷地内には、店主の弟夫婦が営む陶芸工房と産直所があるので、帰りに立ち寄ってみるのも楽しい。
『花いかだ』のそばは二八で、豊かな風味を併せ持つ本格のもの。山形の製粉業者から最高級の石臼挽き粉を仕入れている。訪問客の8割が女性で、「天せいろ」と共に人気なのが「花いかだ膳」。「花おろしそば」の他に、小鉢3つ、一品料理、デザートにコーヒーが付いて、2970円。女子会ランチをしながらおしゃべりを楽しむお客さんが多いそうだ。
宮城でも手打ちそば店がずいぶん増えたが、それでも自家製粉している店はそう多くない。
泉区寺岡の『前谷内屋』は、中でも徹底した自家製粉を行っている店。
南会津から玄そばを仕入れて、乾燥しないようタッパーウェアで保管し、石抜き、磨き、選別、脱皮と、念入りな作業を繰り返す。
そして、殻をむいた丸抜きのそばを、石臼でゆっくりと挽く。粉は再びタッパーウェアで保管する。脱皮もその都度行うので、挽きたて、打ちたて、ゆでたてと合わせた「四たて」ということになる。
岩出山の中心部より南に位置する山の中、美しい雑木林に囲まれて『もみじ野』はある。ここは店主の金田昇さんが別荘として作った家をそば店にしきょかくの。季節の花々や鳥の声が訪れる客を楽しませてくれる。
『もみじ野』のそばは二八。山形の製粉業者から仕入れる国産の石臼挽き粉。これを香りと味を両立させるようにブレンドするのがもみじ野流。
店の自慢は「岩魚の天ぷら」。特別の作り方をすることで本来骨の硬い岩魚が、丸ごとさくさくと食べられる。
ここではそば打ち教室も行っており、もみじ野で経験を積んで改行した人も多い。
■暑い日に食べたい! 宮城・仙台そばの名店■
①鹿落堂(太白区向山)
②手打ち蕎麦 山がた(青葉区本町)
③蕎麦と酒 おもたか(石巻市)
④手打そば 康正庵(青葉区中山)
⑤里山Dining 七ッ母里(黒川郡大和町)
⑥そば処 萬乃助泉本店 (泉区)
⑦蕎花(泉区)
⑧花いかだ(柴田郡柴田町)
⑨そば処 前谷内屋(泉区寺岡)
⑩手打そば もみじ野(大崎市)